「羽生結弦」出演ショーが地域振興に絶大効果 奥州市開催「スターズ・オン・アイス」が大盛況

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江刺鹿踊の様子。「ささら」と呼ばれる長い腰指を着け、太鼓を打ち鳴らし、自らが唱える念仏調の踊り歌にのって勇壮に舞う。今回は地元の3団体がそれぞれ1日ずつ踊りを担当した(提供:奥州市)

演舞はアイスショー開演前の12時から1時間半の間に3回行った。15kgほどの重い装束を身に着け、太鼓を叩き飛び跳ねて踊れば、1回だけでも汗だくになる。4月にしては暑い日、太陽の下での全力の踊りは来場者の心に響いた。さまざまな地域からやってきた観客の好意的な反応は、地元の伝統芸能を大切に守る踊り手たちにとってもうれしいものになったようだ。

鹿踊披露のアイデアが生まれたのは、スターズ・オン・アイスの企画会社の担当者らが奥州市の倉成淳市長を表敬訪問した際だったという。「海外のスケーターも多く出演するので、鹿踊のような郷土芸能が新鮮なのではないか」と、会話の流れで自然に出てきた。

市議会で「どう対応するのか」の質問も

市議会では、スターズ・オン・アイスについて「どういう対応をするのか」という質問が出た。これには、倉成市長と千葉部長が答弁した。

「訪れるのは、関東圏を含む全国からのお客様。対応が悪ければ、全国に向けた悪いPRになってしまう。市としてもできることはサポートして一緒にやっていかなければいけない、と答えました」(千葉部長)

準備期間は限られていたが、運営側との合同会議や、市役所の各部署、地元商工会議所、鹿踊団体などとの調整を重ねて当日に間に合わせた。

とくに運営側への情報提供には力を入れた。例えば交通各社など連絡すべき企業や、それらの企業と運営側で共有する必要のある情報など、土地勘がなければわからないことも多いからだ。

奥州市の魅力をPRしたのは市だけではない。民間事業者も同様だ。会場周りには南部鉄器や岩谷堂箪笥の販売ブースまでもが出店。地元・奥州市の料理を出すキッチンカーには行列ができ、地元の銘菓やパンもよく売れた。

全公演が平日に行われたが、主催の木下グループによると来場した観客は1日当たり3500人以上。観客のほか、キッチンカーや物販、鹿踊を楽しむためにやってきた地元の人も加わり、会場周辺はさながら祭りの賑わいだった。

「大阪や横浜でアイスショーは珍しいイベントではないかもしれません。でも奥州市での開催は意味合いが違います。たった3日で延べ1万人以上が集まる大規模なイベント自体がほぼ初めてだったのですから。精一杯のお出迎えをと考えていくうちに、お祭りのような形になった。アイスショーと田舎のお祭りが一体となり、大谷翔平選手の出身地であることや地元の伝統工芸品などのPRもできた3日間でした」(千葉部長)

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