NCGMがコロナ禍で患者を積極的に受け入れなかったことは周知の事実だ。2021年1月の緊急事態宣言発令時には、塩崎恭久・元厚労相は自身のメルマガで、「今でも法的に厚労大臣が有事の要求ができる国立国際医療研究センターが重症患者をたった1人しか受けていない状態を放置している事の方が問題だ」と批判した。
厚労省は、NCGMを含め、国公立病院の患者受け入れ状況を公表しておらず、塩崎氏のメルマガに関係者は衝撃を受けた。
状況はその後も変わらず、第7波真っ只中の昨年8月3日時点のNCGMのコロナ患者受け入れ率は、確保病床の40%に過ぎなかった。
はたして、感染症ムラを構成する感染研やNCGMを、アメリカのCDCに倣って強化していいのだろうか。それよりも、そもそも日米の社会、歴史の違いを考慮して組織を編成すべきではないだろうか。
アメリカのCDCの前身は、1942年に設立された「Office of Malaria Control in War Areas」と「Office of National Defense Malaria Control Activities」だ。太平洋での日米戦争での感染症対策を念頭に設置された。現在もバイオテロ対策や、陸軍の研究所と共同でワクチンの研究を進めている。
CDCなどの政府系研究機関が強いのは、米中だけだ。両国が世界の軍事大国であることを反映しているのだろう。
米中以外の先進国でのコロナ研究の主体は、政府系研究機関以外の研究者だ。日本の国情を考えれば、このような先進国に倣うのが合理的だ。
日本だけ異なる「超過死亡」
コロナ禍で、わが国は大きな超過死亡を出した。昨年3月、アメリカ・ワシントン大学の研究チームがイギリスの科学雑誌『ランセット』誌に発表した研究によれば、超過死亡とコロナによる死亡の比は6.0だった。これはOECD加盟国で最大で、アメリカ1.4、イギリス1.0、フランス1.3など、他国では超過死亡の大部分がコロナ死であることとは対象的だ。
日本で増えたのは、老衰と誤嚥(ごえん)性肺炎による死亡者だ。高齢化が進むわが国では、緊急事態宣言やまん延防止措置などで高齢者に自粛を強いたことが、体調を崩すきっかけになったのだろう。
コロナ対策で最優先すべきは、国民の命だ。残念なことに、医系技官や、感染研・NCGMの幹部から、この問題の重要性を語られるのを聞いたことがない。わが国の感染症対策で必要なのはシビリアンコントロールだ。
日本版CDCを設置するのではなく、医系技官制度、感染研、NCGMの解体を念頭にゼロベースで議論をすべきである。
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