近畿日本ツーリスト「コロナ過大請求」の重い代償 実は「ドル箱」事業で過去最高益を計画していた

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近畿日本鉄道系の旅行会社で大手の一角だ。クラブツーリズムも展開(写真:編集部撮影)

「誠に遺憾ながら、最大で約16億円の過大請求に疑義があることが判明いたしました。関係者の皆様、お客様、ひいては社会の皆様の信頼を裏切り、多大なご迷惑をおかけしましたこと、改めて会社として厳粛に受け止め、衷心(ちゅうしん)よりお詫び申し上げます」

5月2日、近畿日本ツーリスト(以下、近ツリ)の髙浦雅彦社長は記者会見で頭を下げ陳謝をした。

同社は、2020年以降、地方自治体などから新型コロナウイルスワクチン接種会場の運営や同コールセンター業務を受託し、自治体に報酬を請求していた。その請求の際に、人件費を水増し請求していたことが明らかになった。まず不正が明らかになったのは、大阪府東大阪市と近ツリの取引である。

近ツリは、東大阪市から新型コロナウイルスワクチン関連の業務を受託し、コールセンター業務は、同業務を行うマケレボに再委託をしていた。その際に、東大阪市から指定されたブース数より少ない席数をマケレボに発注する一方で、東大阪市には指定された席数の報酬を請求していた。

過大請求は全国に拡大

もともと4月12日に開示した資料では、過大請求の総額は、関西法人MICE支店による2億8000万円超とされていた。その後、全国762の自治体などから請け負った事業について社内調査を実施。その結果、5月2日には、過大請求の金額は計16自治体で5億8000万円超と2倍近くに膨れ上がる。新たに大阪府や静岡県焼津市などでも過大請求が発覚したためだ。

また、このほかに正確な取引があったことを示す資料がなく、不正請求の疑いがあるものが、最大約10億円あると発表された。

会見の中で、髙浦社長は不正に至った理由を2つ挙げた。

まず、自治体との契約に関する知識不足である。「円滑運営に支障がなければ、自治体との契約に沿った人数などの内容を遵守しなくてもよい」という認識を近ツリ社員が持っており、管理体制の構築も不十分であったという。

次に挙げられたのが、「営業目標達成意識」だ。同社が主力としていた、旅行事業はコロナ禍の行動制限により大きなダメージを受けた。そこで、「新たに取り組み始めた新型コロナウイルス対策の受託事業により、営業目標を達成したいという意識が強く働いていた」と髙浦社長は説明する。

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