近畿日本ツーリスト「コロナ過大請求」の重い代償 実は「ドル箱」事業で過去最高益を計画していた
過大請求をされた東大阪市は近ツリに対して、「正当な理由なく契約を履行しなかった」として、市が発注する全事業の入札停止を決定した。期間は、2023年4月21日から、2024年4月20日の1年間だ。
【2023年5月12日11時50分追記】初出時の図表から焼津市の対応を修正しました。
そのほかにも大阪府や焼津市など過大請求をされた多くの自治体が処分を検討している。
大阪府は「事実関係を精査した上で、過大請求分の返還を求め、入札参加の指名停止などの処分を検討する」と東洋経済の取材に回答した。焼津市や掛川市などほかの自治体も、処分を検討している。「信頼はかなり失われている」と近ツリに対する失望の声も自治体からは聞こえてくる。
影響は、受託事業だけにとどまらない。「本業の旅行事業にもマイナス影響が広がることは免れないだろう」と旅行会社大手の幹部は指摘する。この幹部が指摘するのは、小中学校などの修学旅行に関するものだ。
今回の不正を受けて「公立小学校の修学旅行の受注から除外される可能性は高い」と同幹部は指摘する。不正をした事業者となれば、学校側が敬遠し、JTBなど競合に顧客が流れることになりかねない。
KNT-CTHDは、修学旅行の受注を得意としており、2022年4月〜2023年2月の取扱額は、481億円と取扱額の2割強を占める。コロナ前の2019年4月~2020年2月と比較しても99.7%とほぼ同規模を維持しており、安定収益源となっているのだ。
もとをたどれば市民の税金
旅行会社にとって新型コロナによる行動制限は、「ビジネスをするな」と言われたに等しい。旅行会社各社はこの3年間、非常に厳しい事業環境を耐え抜いてきた。
とはいえ、近ツリが過大請求で得てきた受託報酬は、もとをたどれば市民の税金となる。同社と親会社のKNT-CTHDの責任は重い。信頼回復には、過大請求した報酬の返還はもちろん、公共事業へ真摯に向き合う姿勢が求められる。
近ツリは、足元の事業への影響について「個人旅行、団体旅行の予約や足元のオペレーションにも一部影響が出ている」(髙浦社長)とし、5月9日には、同11日に予定していた2023年3月期の決算発表を延期することも発表している。今後は稼ぎ頭となっていた自治体などからの受託事業と、修学旅行のマイナス影響も免れないだろう。
近ツリが大きな代償を払っていくのはこれからだ。
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