「NHKのネット展開」副会長の“謎発言"を読み解く ネットでも放送と同じことしかやらないのか?
前の週のWGとあわせて考えると、NHKはネットで「NHK+」のような「放送と同等」のもの以外やるつもりがないのかと受け止めてしまう。この記事はNHK内外に大きな波紋を呼んだ。元NHKで現スローニュースの熊田安伸氏はデジタル・ジャーナリズム育成機構の理事も務める影響力の強い人物だが、スローニュースのnoteに「井上副会長様、公共メディアを担う気がないのならば、NHKはもう解体すべきです」と題した文章を載せた。人々の役に立つ報道には映像かテキストかは関係なく、使えるツールは何でも使うべきだし、「公共放送から公共メディアへ」とはまさにそういう意味だったはずだ。井上副会長の姿勢に失望した熊田氏の元同僚たちが彼のところにコメントを寄せたという。「最悪ですね。NHKおわりかな」「転職作業を進め始めています」などなど、底知れぬ絶望感が漂うコメントの数々。読んでるこちらも切ない気持ちになった。
さらにその翌週、6月7日に「公共放送WG第9回」が慌ただしく開催された。私はてっきり井上副会長の前回の説明を何らかフォローするような話が出ると思ったが、意外にも一番最初はこのところ騒動となっている「衛星放送の配信予算」についての謝罪だった。その後で前回出た質問への回答が説明されたものの、井上発言の消極ぶりを補うようなものではなく、やはり必須業務化とは「放送と同等」のことをやっていくことだと受け止めた。
ネット活用を「補完業務」としか捉えていない
昨年9月から半年以上重ねた議論の結果、「NHK+以外あんまりやる気がない」となったも同然でがっかりしている。それに、この状態で必須業務化になると、「テレビを持ってないけどNHK+を使いたい人はそのための受信料を払えば使ってよし」ということにしかならない。そんな奇特な人、何人いるというのだろう。
若者は確かにテレビを持ってなくてもTVerで民放のドラマやバラエティーを見るし、そういう人は増えている。だがテレビはないけどNHKをどうしてもスマホで見たいからNHK+の契約をしたい、と考える若者がいるだろうか。多分日本中でカウントしても数えるほどしかいないと思う。
だったら何も大げさに「必須業務」などとせず、「例外業務」くらいにして、とっととやればよかったのではないか。
こうなったのは結局、稲葉延雄新会長のもとで組まれたいまのNHK上層部が、ネット活用を「補完業務」としか捉えていないからだと思う。放送至上主義から抜け出せていないのだ。だったら「公共放送から公共メディアへ」などとカッコつけて掲げなくてもよかっただろうに。
だが彼らはわかっていない。これから「放送」という形態は転がり落ちるように時代に置いていかれる。2030年に向かって団塊の世代は悲しいことに急激に人数が少なくなり、団塊ジュニアには定年が迫ってくる。放送を支えてきた世代は、この国の中核ではなくなるのだ。若者たちがどんどんチューナーレステレビに逃げたら受信料は激減するのに、どうするのだろうか。
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