特別会計「こども金庫」は野放図と思いきや封印策 歳出が増えても借金を増やさない財源スキーム

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だから、子ども予算の財源確保のために、医療・介護の歳出改革を本腰を入れて行わざるをえないだろう。医療・介護の歳出改革が不徹底に終わると、子ども予算の財源が確保できず、それによって子ども予算が増やせないという反発に、医療・介護関係者が直面する。

もし改革が不徹底だと、医療・介護関係者が少子化対策に非協力的だ、というレッテルを貼られるかもしれない。

財源不足が生じて、つなぎ国債で一時的にしのいだとしても、その返済財源について一般会計は助けるつもりはない。なぜなら、一般会計の収入となる消費税を増税しないこととしたからである。わざわざ特別会計を新設して区分経理したわけだから、子ども予算のために出したつなぎ国債の返済には、子ども予算の財源の中から将来的に工面しなければならない。

ということは、つなぎ国債を多く出せば出すほど、子ども予算の先食いをすることになるだけなのである。これも、消費増税を行わないこととしたことによる。

社会保険料の上乗せで財源を賄うことをできるだけ避けるならば、ますます医療・介護の歳出改革に注力しなければならない。

新たな財源スキームが誕生

子ども予算に限らず、コロナ禍における歳出増圧力の前に、財務省の予算統制が利きにくくなるようにみえる。ただ、防衛力強化にしても、GX(グリーントランスフォーメーション)投資にしても、子ども予算にしても、歳出を増やす分については、目先の歳出増を受け入れる代わりに、恒久的な国債増発に依存しない財源スキームにコミットさせるという新たな財政運営の手法を見出したようだ。

防衛力強化だけは、特別会計はないものの一般会計の中で防衛力強化資金という形で区分経理をし、GX投資はエネルギー対策特別会計で、子ども予算は「こども金庫」と称される新たな特別会計で、確保された財源とともに経理されることになる。

国債の形で目先の負担増を過度に避ければ避けるほど、将来的にその返済負担で若者・子育て世代の所得を減らすことになる。そうならないように、恒久的・安定的な財源をしっかりと確保しなければならない。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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