しかし、それは逃げ道にはならない。なぜなら、消費税をはじめとする増税を行わず、「こども金庫」ともいわれる新たな特別会計で経理することとしたからである。
このスキームは、一見すると、子ども予算を口実に消費増税を画策したが失敗したうえに、財務省の影響力が及びにくく既得権益が温存されやすいとされる特別会計で経理することになり、しかもそこでは国債まで増発できる、というようにみえる。
特別会計といえば、既得権益の温床とも揶揄され、過去に大改革が行われた。印象深いエピソードとしては、小泉純一郎内閣の塩川正十郎財務大臣(当時)が国会で、「母屋ではおかゆ食って、辛抱しようとケチケチ節約しておるのに、離れ座敷で子どもがすき焼きを食っておる」と答弁したことがあった。一般会計のことを「母屋でおかゆ」、特別会計のことを「離れ座敷ですき焼き」とたとえた。
特別会計は、2001年には37会計あったが、小泉内閣と第2次安倍晋三内閣で整理統合が行われて、現在では13会計となっている。区分経理をする必要のない特別会計は極力、一般会計に統合することが進められた。
特別会計に押し込め”独立採算”に
それでも、子ども予算のために特別会計を創設するのだ。他意がないはずはない。それは、特別会計で、好き放題予算をつけることではなく、一般会計が救済しない形で独立採算的に経理する、という意図と考えられる。
突如降って湧いてきた「子ども予算倍増」に、表向きは翻弄されながら、財源調達手段としては虎の子である消費税の増税は一切行わせず、厚生労働省が主導権を握る社会保険料の上乗せを中心に財源を確保する形に追い込んで、しかもそれを特別会計に押し込めて、一般会計の財政収支の悪化を防ぐ、というのが筆者の見立てである。
社会保険料の上乗せをできるだけ少なくしたいのならば、厚生労働省所管の歳出を削減して財源を捻出するしかないという形に封じ込めたかのようである。
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