そして、これらの子ども・子育て予算は、「こども金庫」とも称される、こども家庭庁が所管する新たな特別会計で経理する方針である。
では、その財源はどう確保するのか。
予算規模が直前になって追加される前の3兆円程度とされていた段階では、一部の報道でも出たように、東洋経済オンラインの拙稿「子ども予算を『ねずみ講』『消費税』以外で賄う解」でも言及した社会保険料の上乗せで1兆円前後、歳出改革で1兆円前後、社会保険料の自然増収など既定予算の最大限の活用で0.9兆円程度捻出して、財源を確保することとしていた。
子ども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした増税は行わない、と「こども未来戦略方針」の素案段階から明言している。
「徹底した歳出改革」で財源確保
ところが、社会保険料の上乗せによる負担増に対する反発に直面したことから、徹底した歳出改革が財源確保の最優先に浮上した。しかも、予算規模を追加した分の財源確保が定まらないこともあってか、「こども未来戦略方針」の素案では、それぞれの財源をいくら工面するかについては、全く示されなかった。
歳出改革といっても容易ではない。
社会保障以外の予算で歳出削減を行って財源を捻出することは、2022年末に決まった防衛力整備計画(2023~2027年度)で必要とされる防衛財源の一部にすることとなっている。だから、子ども予算の財源となりうる歳出改革の対象は、社会保障費である。
社会保障費の中でも、医療と介護が歳出改革の主な対象となる。確かに、医療や介護の分野では、未着手の改革事項が山積しており、それらを実行することで、財源を捻出できる余地は十分にある。しかし、医療・介護関係者からは、早くもそうした歳出改革に対して反発が出始めている。
医療・介護の歳出改革が不徹底に終わると、子ども予算の恒久財源が十分に確保できない。財源が確保できないけれども、子ども予算を増額しようとすれば、借金で賄うしかない。「こども金庫」と称される新たな特別会計では、つなぎ国債として「こども特例公債」を発行できるようにすることとなっている。
社会保険料の負担増は避け、社会保障の歳出改革も不徹底になっても、国債で財源を賄えばそれでよい、という逃げ道があるかのようにみえる。
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