やんちゃ坊主が上った「天皇の料理番」への道

料理で日本のステータスを高めた男の人生

たってのリクエストに「東宮仮御所に出入りしている鮨屋の鮨よりもおいしいものをさしあげなくては気が済まない」と、行きつけの銀座の鮨店に弟子入り。鮨をふるまう日までの1週間、ひたすら握り方を学んだ。

料理人として、いちばん大事にしていたことは

つまんだ時は崩れずに、口に入れるとパラリとほどけるシャリの握り方。外出中も、ちょうどよい大きさのニンジンを左手で四六時中握っていた。夜もニンジンを手にガーゼで縛って握りながら寝たという。さらに当日は、ご飯が手につかないように、1時間前から湯の中に手をつけて十分に湿らせておいたというから徹底している。

そのかいあって、さすがにおいしかったのだろう、皇太子さまは25個も召し上がったそうだ。さらに、秋山氏がそのことを後で昭和天皇に打ち明けたところ、愉快そうに「あははは」と笑われたとか。天皇家と秋山氏の親密なつながりが伝わって来る心温まるエピソードだ。

秋山氏のフランス料理は、もちろん宮中晩餐会や午餐会、茶会などでもいかんなく発揮され、諸外国の賓客から称賛を浴びた。そのメニューの中で、100年経った今も晩餐会で必ずと言っていいほど出される名物デザートがある。富士山をかたどったアイスだ。報道でご存知の方もいるかと思うが、オバマ大統領も昨年の来日時、抹茶味の富士山型アイスをたいそう気に入っていた。

秋山氏が料理人としていちばん大事にしていたことは何か。それは、「真心を込めること」だ。言葉にすれば簡単だが、実践し続けるのは意外と大変だ。素材選びから包丁の入れ方、調理の火加減、盛り付けに至るまで、一挙手一投足もおろそかにしない心構えがいちばんのコツで、これは初心者も熟練者も同じという。

料理研究家の脇さんも「気持ちはすごく大事。やっぱり料理は愛」と、秋山氏の姿勢に共感している。

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