信越化のシリコンウエハ主力拠点、信越半導体白河工場は4月中に一部稼働を再開、鹿島の塩ビ樹脂生産は5月下旬メド【震災関連速報】

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信越化のシリコンウエハ主力拠点、信越半導体白河工場は4月中に一部稼働を再開、鹿島の塩ビ樹脂生産は5月下旬メド【震災関連速報】

信越化学工業は、東日本大震災の直後から操業停止が続く信越半導体白河工場(福島県西白河郡西郷村)を4月中にも、鹿島工場(茨城県神栖市東和田)の塩化ビニール樹脂プラントを5月下旬にもそれぞれ再稼働させる。震災で受けた設備の損傷やインフラの寸断を修復し、主力生産拠点の機能回復を急ぐ。

白河工場は信越化が直径300ミリのシリコンウエハで主力とする生産拠点。ウエハの材料となる単結晶(インゴット)も手掛けている。白河工場の詳しい生産能力について信越化は明らかにしていないが、グループ全体で月産100万~110万枚(300ミリウエハ)とされる信越化の生産能力の半分以上は占めているとみられる。白河工場からは、主に日本やアジアの半導体メーカーへ供給しているようだ。

信越化学は4月11日、白河工場について「近日の再稼働に向けて準備を整えている」と発表した。地震発生前に製造した在庫品の出荷についてはすでに再開した。「近日」の解釈について、一部では「1~2週間以内」と報じられているが、実際には「今月末までに一部の設備を動かすのが目安で、全体の復旧時期はまだメドが立っていない」(信越化学広報部)という。シリコンウエハは超精密な加工が必要な製品であり、製造設備の再調整や品質の確認などに時間を要しているようだ。

信越化学は半導体シリコンウエハの世界市場で3割程度のシェアを持つ。その主力工場が停止している事態をざっと見積もると、少なくとも世界の1~2割程度の半導体シリコンウエハが、1カ月以上にわたって生産できていない状態にある。4月中の稼働再開も一部にとどまり、その状態が長期化すれば、電気製品や自動車など半導体を用いるさまざまな工業製品に関連する産業や企業への悪影響が及ぶ可能性がある。

信越化学は群馬や長野、米国などで直径300ミリのシリコンウエハをつくる工場で、白河工場の代替生産を検討しているが、その準備にも時間がかかりそうだ。シリコンウエハは汎用的な製品でなく、顧客の半導体メーカーごとに細かく仕様が異なるためだ。半導体はパソコンや携帯電話などの電気製品のほか自動車などにも使われている。めぐりめぐって、それらの産業のサプライチェーンに重大な影響を及ぼすおそれもあるといえそうだ。

鹿島工場の塩ビ樹脂プラントは、原料の調達先である三菱化学の鹿島事業所が5月20日をメドに稼働を再開する見込みとなったことに併せて、復旧を目指している。鹿島工場では光ファイバー用部材のプリフォームもつくっているが、4月11日に部分的な操業を再開した。塩ビ樹脂、プリフォームともにコンビナート全体の復旧に合わせて本格的な操業再開を目指す。

(武政 秀明 =東洋経済オンライン)

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