EV(電気自動車)向け車載電池大手の中国の中創新航科技(CALB)が、大学や大学院をまもなく卒業予定の採用内定者に対して採用取り消しを通告したことがわかった(訳注:中国の大学・大学院の卒業時期は6月から7月にかけて)。
財新記者の取材に応じた5人の元内定者の証言によれば、彼らは2022年10月に中創新航、大学、学生本人による(採用内定の)三者協定に署名し、2023年7月に入社することが決まっていた。ところが5月24日、中創新航の人事部門から突然電話があり、「社内事情のために採用を取り消す。1人当たり3000元(約6万円)の賠償金を支払う」と、一方的に告げられたという。
「会社側は5月15日まで、内定者に電話をかけてきて入社意思を確認していた。それなのに急に採用を取り消され、対策を講じる余裕はまったくなかった」。卒業後に中創新航の本社勤務が内定していた李飛さん(仮名)は、強い不満を滲ませた。
大学院で材料工学と化学を専攻した李さんに対して、中創新航は(電池材料の)リサイクル技術のエンジニアとして採用することを約束していた。にもかかわらず、内定取り消しの電話の2日後には、賠償金と(雇用契約の)解約書類が早くも送られてきたという。
時価総額はピークの6割未満
中創新航は江蘇省常州市に本社を置き、EVの新車に組み付けられる車載電池の搭載量ベースで、首位の寧徳時代新能源科技(CATL)、第2位の比亜迪(BYD)に次ぐ第3位につける。
とはいえ現実には、同社の経営は2022年秋頃から変調をきたし始めていた。受注量の想定を超える減少に直面し、同年11月から12月にかけて週休2日や労働時間の短縮を従業員に強制。そのために賃金の手取りが目減りし、少なからぬ数の社員が自主的な退社を余儀なくされた。
中国では2020年頃からEVの販売台数が急増し、車載電池の需要が右肩上がりで伸び続けた。それを追い風に、中創新航は2022年10月に香港証券取引所への上場を果たし、時価総額は一時580億香港ドル(約1兆373億円)に達した。
ところが、その後にまず(EVメーカーが調達する)車載電池の需要の伸びが鈍化し、2023年に入るとEV市場の成長も減速に転じた。そんななか、中創新航の株価は下落の一途をたどり、5月26日時点の時価総額は325億香港ドル(約5813億円)とピークの6割未満に縮小している。
(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は5月27日
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