「中国は今後、『一帯一路』の沿線諸国へのインフラ建設投資をより厳選することになるだろう。財政状況が比較的良い国への投資を増やす一方、そうではない国に対しては投資のリターンや相乗効果をしっかりと見極め、(その国の)より健全かつ持続可能な発展を促すべきだ」
スイス金融大手UBSの傘下のUBS証券でアジア地区の工業セクター担当の調査チームを率いる徐賓氏は、5月30日に開催されたメディア向けのイベントでそのような見方を示した。
(訳注:一帯一路は中国を起点にアジア、欧州、南太平洋などを結ぶ広域経済圏構想。習近平国家主席が2013年に提唱した)
徐氏の試算によれば、一帯一路の沿線64カ国の潜在的なインフラ建設需要は、平時の場合で年間1兆1000億ドル(約154兆円)規模に達する。しかし、これらの国々の多くではGDP(国内総生産)に対する債務の比率が歳入の比率の2~3倍に上り、政府がインフラ建設投資に回せる資金が限られているという。
脱石油依存を中国が支援も
そんななか、徐氏は今後の有望な投資先として中東地域に注目する。経済発展の度合いが(一帯一路の沿線国のなかで)相対的に高く、潤沢な財政資金とインフラ建設のニーズを兼ね備えるからだ。過去6カ月の間に、中東地域と中国の協力関係がより緊密になったことも前向きな要素だ。
徐氏の見解は複数の統計データに裏付けられている。中東地域は、人口とGDPではいずれも世界の3%程度にすぎないが、原油の確認埋蔵量は世界の50%、天然ガスは同40%を超えており、輸出を通じて莫大な利益を生み出している。その一部を投じた中東地域のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)の資産運用規模は4兆ドル(約560兆円)に上り、全世界のSWFの約35%を占める。
「中東地域は、再生可能エネルギーの導入などを通じて石油への過度な依存から脱却し、経済の多角化を促進する変革の途上にある。そして中国は、そのための支援を提供する能力がある主要国の1つだ」(徐氏)
(財新記者:范浅蝉)
※原文の配信は5月31日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら