では、アメリカはどうでしょうか。金利を上げることで不景気になったら今度は金利を下げるでしょうが、今のところ景気に問題はなさそうです。物価は8%程度上昇しても、給料も5%平均で上がっていますし、コロナ政策でばらまいたお金があるから、人々は財布のひもを締める必要がないのです。
となると、多少金利政策に変化があったとしても、円安はしばらく続くと考えざるを得ません。実際、2023年2月以降は1ドル130円台と、依然として円安傾向が続いています。
実は、景気に対しては、日銀にできることはありません。日銀の役割は物価の安定であって、日本経済を活性化させるために存在しているわけではないからです。
景気をよくしていくのはもっぱら政府の役割ですが、肝心の岸田政権は「新しい資本主義」などという中身のないことを言い続けているので、投資家はどんどん日本から逃げてしまいます。
加えて、今の日本には個別にいい企業はあっても、業界として強いものがありません。一時期のソーシャルゲーム業界や、昭和の時代の不動産業界のように、「この産業に投資すれば儲かる」というものがないのです。
結果的に、国内で買われるのも海外の株で、日本株ではありません。
それによって、円が流出しさらに円安が進み、海外投資も加速します。
輸入品が高騰し、物価高が進行します。
人々が消費を控え、不景気になります。
こうして、景気が低迷しているなかで物価が高騰していくという最悪のシナリオ「スタグフレーション」が起きるのです。
好景気を望まない社会的要因
そもそも、物価が上がること自体は悪いことではありません。物価上昇に比例して給料も上がっていけば、アメリカのような好景気になります。僕が住むフランスでも、たとえばユニクロの商品は日本と比べて3割増しくらいの値段なのですが、別に問題なく売れています。つまり、物価の上昇を国民が受け入れているわけです。
ところが、日本では景気が悪いまま円安による物価高が進行しています。
長く日本は、外貨を稼げるような魅力的な商品・サービスを提供する産業を育てずにきました。政治家たちが「円安にすれば輸出が増えて国内産業が成長する」という古い政策をとり続け、商品・サービスの魅力を向上させるよりも、円安によりとにかく安く提供することで競争力を高めようとしてきたために、今の結果を招いているのです。
ここから抜け出すには、大きな変革が必要です。
もはや、政府の方針など関係なく個人レベルで動くしかないでしょう。個人や一民間企業ができる対策として、まずは海外向けの仕事を増やすことです。
それは、海外の企業と仕事をすること。たとえば、日本のエンジニアはいい仕事をするにもかかわらず、日本では安い給料しか受け取れません。彼らが外国企業で仕事をしたら、ずっと高い給料を手にできます。
そのときに、海外に住んでもいいけれど、家賃も物価も高いから、理想は日本にいてリモートで海外企業の仕事をすることです。モノを売る商売もいいでしょう。日本で日本人相手に売るのではなく、海外に顧客を持ち外貨を稼ぎましょう。
たとえば、アメリカの大都市、ニューヨークやロサンゼルスでは、ラーメン1杯が3000円近くするのが当たり前です。日本なら1000円ぐらいの値づけしかできないでしょう。つまり、しっかり物価が上がっている国に対してモノを売れば、日本国内で売るよりより多く稼ぐことができるのです。
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