商売で2つの選択肢を迫られた際に考えたい損得 中学生でもわかる「遊園地出店ごっこ」が映すこと

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「あら、よくわかりましたね。私たちが費用を考えるとき、目に見える費用、つまり自分が実際に使ったお金だけに目が行きがちです。けれど、いくつかある中から1つを選んだということは、ほかの何かをあきらめたということでもあります。そのなかで最もお得なものの価値も含めるというのが、経済学的な費用の概念になります。このように、目に見えない費用も含めた経済学的な費用のことを『機会費用』と呼びます」とナ先生が言った。

「機会費用? 機会(チャンス)をあきらめたという意味で機会費用ってこと?」

ナ先生の説明を聞いて、ジェヨンは誇らしそうな顔になり、ギュヒョンは機会費用という用語に興味を示した。

「チキンのお店を選んだことでトッポッキはあきらめましたよね。トッポッキを選んでいたら32万円の利潤があったかもしれないので、このケースの機会費用は32万円ということになります。今回、チキンを選んで30万円の利潤を得たということは、経済学的に考えると2万円の損失ですよね。チキン店を開業した場合の『経済学的な利潤』はマイナス2万円です!『売り上げ-経費』の30万円というのは、あくまでも『会計的な利潤』であり、経済においては経済学的な利潤のほうが重要なのです」とナ先生。

「えっと……何かちょっと難しいな」とジェヨン。

「聞き慣れない用語だから、そう思うのも無理はありませんね。じゃあ、今日はこれだけだけ覚えてください。

あらゆる選択には代価がつきもの! 

選択するときはあきらめるものの価値も見よう!」

とナ先生。

「『タダ飯はない』ってことわざを聞いたことがあるけれど、それとどこか似てますね!」

ソナが言った。

「そうね、『フリーランチ』なんてものはないのよ。それでは、今日はここまで!」とナ先生。

「先生、チキンごちそうしてくださいよ。すっごく食べたい!」

生徒たちのおねだりに負けて、ナ先生は実験経済部のみんなと一緒にチキン店に向かった。

埋没費用、無視してしまおう!

運ばれてきたばかりのアツアツのチキンを前に、生徒たちがよだれを垂らしそうな顔していると、ナ先生がまた突拍子もない質問をした。

「左側にあるチキンは、お店のオーナーが取引先から特別価格の400円で仕入れた鶏で作ったものなんですって。お店に戻ってきたオーナーは、特別価格の鶏をもう少し買おうとして、また取引先に向かったんだけれど、もう売り切れだったの。それで同じ鶏なんだけれど、右のほうのチキンは800円で仕入れた鶏で作ったそうよ。みんな、どっちのチキンを食べたい?」

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