商売で2つの選択肢を迫られた際に考えたい損得 中学生でもわかる「遊園地出店ごっこ」が映すこと

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「えっ? ほんとの話?」

「ウソに決まってるじゃん。僕はどっちでもいいです。だって同じチキンですよね」

チャンミンの反応にギョンホが突っ込みながら言った。

「おお、ギョンホは『埋没費用』を無視できるのね」

ナ先生が言った。

「え? 埋没費用?」とギョンホ。

「チキンを選ぶとき、材料の鶏をいくらで仕入れたかは重要じゃないの。400円で仕入れていようと800円で仕入れていようと、すでに支払われている費用だからです。今の選択では回収できない費用を埋没費用と言います。何かを選択するとき、埋没費用を考慮する必要はありません」とナ先生。

「まあ、当然のことですよね」

ギョンホが答える。

合理的な選択が出来なくなるのなら

「当然なんだけど、人ってときどき埋没費用のせいで合理的な選択ができなくなることがあるでしょう? 先生にもそんなことがありました。以前、オペラの公演チケットがあったのに、公演当日に風邪をひいちゃったのよ。当日だと払い戻しもできないから、チケットがもったいなくて観に行ったわ。そしたら、無理をしたせいで症状がひどくなっちゃって……。オペラの上演中もずっと咳をがまんしていたから、ちっとも集中できなかったわ」とナ先生が言った。

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「そうか、そのチケット代が埋没費用ってことなんですね! その日、先生は家で休んでいたほうが便益が大きかったのに、もったいないと思って埋没費用を無視できなかったんだ」

「バイキングで、元を取ろうと無理して食べるのも、埋没費用にこだわった行動ですね。お金を払ってるんだから食べないともったいないとか言って、もう満腹なのに食べつづけて、結局お腹をこわしちゃう。僕にもそんな経験があります」

ジェヨンとチャンミンがそう話した。

「これから選択するときは、埋没費用は無視しましょう! さあ、チキンを食べましょうか」

ナ先生が声をかけると、みんなは大きな声で「いただきます!」と叫んで、すぐにチキンに手を伸ばした。

キム・ナヨン 韓国・ソウルのヤンジャン中学校社会科教師

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Kim Nayoung

梨花女子大学で社会科教育を専攻し、同大学院で経済教育修士、行動社会経済学博士課程を修了。韓国開発研究院(KDI)、企画財政部、金融監督院、教育部、韓国教育開発院(KEDI)などいくつもの機関で経済・金融教育資料の開発および教材の執筆に参加し、2015改訂教育課程の社会科評価基準の開発研究を進めるなど、教育課程関連の研究にも参加している。2009年、中学の時に必ず知っておきたい経済理論をやさしく面白く体得できるよう、経済勉強サークル「実験経済部」を作った。

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