だが、対処法も存在する。自分のために、労力を使ってでも、こうしたすべてを理解する価値はある。これはあなたが誰かにとってのいい友人になるだけでなく、健康を増進し、寿命を延ばし、生涯の幸福を保証する確実な方法でもあるのだ。
友情を理解する
友情と母乳育児を関連づけるのは変に思うかもしれない。しかし私たちの友人への愛は、ここからはじまっている可能性がある。赤ん坊が乳房に吸いつくと、母親の脳下垂体からオキシトシンが分泌される。これにより、乳房の筋肉が収縮して母乳が出るようになるのだが、その際、不安感や血圧、心拍数なども低下する。
オキシトシンに関連して生まれる感情は、赤ん坊にお乳を吸うことを促し、母子のあいだの強い、愛情に満ちた絆を築く一助となる。これはすべての哺乳類に共通して見られる現象だが、人間をはじめ、仲間をつくる種族では、このシステムが拡大して使われている。
進化は、無駄な労力を省いて経済的に行われてきた。母子の絆以外にもかかわるようになったオキシトシンは、ハグや軽い触れ合い、マッサージなど、他者とのポジティブな身体的接触の際にも分泌されるようになったのだ。そしてその心地よさが報酬となり、触れた相手にまた会いたいと思わせる。友情の芽生えだ。
友情の原動力となる化学物質はそれだけではない。友人は、幸福感をもたらすエンドルフィンの分泌を誘発する。友だちと一緒に活動すると、ひとりのときより多くのエンドルフィンが分泌される。この感覚は非常に優れたもので、脳スキャンをしながら友人の写真を見ると、依存に関連する領域に活動を示す点滅が現れる。友情は、喫煙者やドラッグ常用者に見られるのと同様の、強化と報酬のシステムによって突き動かされているのだ。
また、エンドルフィンの分泌を誘発する行動にはグループでできるものもあり、複数の個人が同時に友人としての絆を深めることができる。うれしいことに、笑いもそのひとつだ。歌、ダンス、ただの会話でさえも、多くの人と一度につながる機会を増やす。
私たちはみな同じ神経生物学的プロセスをもっているが、ほかの人より友人をつくるのが得意な人がいる。単純に「一緒にいたい」と思わせる才能があるのかもしれないが、それより、化学的に大きな見返りがあるから、友人をつくろうというモチベーションが高いのかもしれない。
わかっているのは、人懐っこい人たちが社交的なのは、遺伝子がそうさせているということだ。同じ遺伝子を共有する一卵性双生児と、およそ半分の遺伝子を共有する二卵性双生児のソーシャルネットワークを比較したところ、仲間内での人気の高さの違いの46%を遺伝的要因が占めていることがわかった。
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