スシロー、"時価"の白皿導入に見る強烈な危機感 黒皿は大幅に値下げ、国内事業は不調の真っ最中

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なお、業界1位のスシローにたいして、2位のくら寿司を見てみよう。決算時期が異なるため比較はフェアではないが、既存店の動向を確認すると、2022年11月から2023年4月の上半期では既存店が前年比100.7%となんとかプラス(+)となっている。

スシローは狼煙を上げるか

話をスシローに戻す。スシローはまわる寿司のレーンを夏あたりから再開すると発表していた。寿司はタブレットから注文すればいいと思うかもしれない。ただ、寿司が回って、お客がそれを見ると食欲が刺激されるといわれる。さらに寿司の実物をプレゼンテーションする役割がある。

そして冒頭で紹介した皿の施策だ。まず黄皿の充実により訴求性の向上をはかる。客数が減っているときには、まだ商品単価を落とす施策が有効でありうる。そこで黒皿を一気に引き下げた。

しかし全体の収益を考えると、同時に客単価上昇の施策も考えねばならない。そう思えば、スシローの、黄皿=充実、黒皿=値下げ、白皿=単価アップは、よくわかる戦略といえる。

いわゆる「プライスMD」と呼ばれる手法は、自社の来店者が最も望む価格を中心に、その特定の価格に集中して商品を提供する。

以前は回転寿司といえば全品100円のイメージがあった。そしてスシローは黄皿にその役割を負わせてきた。そのプライスMDを停止するわけではないものの、高価格帯を提供することで幅をもたせる。

ところで現在では回転寿司チェーンは家族連れが多く、さらにメニューも豊富で、寿司「も」食べられる外食チェーンと化している。さらにスシローの競合店はゲームや多くのキャラクターコラボを揃え、まるでアミューズメント施設を目指しているようだ。

また当然だが、今回のスシローの施策がうまくいくかは、最終的には商品の魅力アップをどこまでお客に伝達できるかにかかっている。これまで価格や決算などの側面から説明してきたが、けっきょくは現場で選ばれるかが重要だ。

競合他店もメニューを充実させ、さらに商品以外のエンタメ開発も怠らない。その戦国時代にスシローは商品の味で付加価値を感じてもらえるか。スシローの新商品に引き続き注目したい。

坂口 孝則 未来調達研究所

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さかぐち・たかのり / Takanori Sakaguchi

大阪大学経済学部卒。電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買業務に従事。調達・購買業務コンサルタント、研修講師、講演家。製品原価・コスト分野の分析が専門。代表的な著作に「調達・購買の教科書」「調達力・購買力の基礎を身につける本」(日刊工業新聞社)、「営業と詐欺のあいだ」(幻冬舎)等がある。最新著は「買い負ける日本」(幻冬舎)。

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