岸田首相は6月に衆院を解散しないかもしれない 「6月21日の早期解散説」を否定する根拠とは?

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とはいえ筆者は、解散のタイミングはもう少し先なのではないかと考えている。おそらく、「広島サミット成功」のあとに岸田さんが狙うのは政局ではあるまい。西側の結束を強調したあとで、対中外交に臨むことを考えているのではないか。これまでの岸田外交の経緯を振り返ってみると、周到な準備がなされているのである。

岸田外交の「周到な準備」とは?

(1) 昨年12月、「防衛3文書」を閣議決定した。①国の外交・防衛の基本方針を定める「国家安全保障戦略」、②そのために必要な防衛力の水準を規定する「国家防衛戦略」、③向こう5年間の防衛費の総額や主要装備を定める「防衛力整備計画」の3点だ。防衛費をGDP比2%に近づけ、外敵に対する反撃能力を自衛隊に持たせる。これまで「平和憲法」の下で、「あれもできません、これもできません」と言っていた日本としては大胆な方向転換となった。
(2) 次にワシントンDCに飛び、1月13日にバイデン大統領と会談して、この政策転換を説明した。アメリカ側はこれを歓迎。安倍元首相でさえ、ここまで踏み込むことはできなかったのだから。真面目な話、これが安倍内閣であったなら、3文書は公明党の反対などにより、もっと薄味にされていたことだろう。
(3) 運にも恵まれた。韓国のユン・ソンニョル大統領が「徴用工問題」で妥協し、3月には日韓首脳会談が実現した。韓国側が一方的に譲歩してくれたので、わかりやすい外交得点となった。5月の連休には今度は岸田首相がソウルに飛び、日韓関係改善の流れが明確になった。
(4) 懸案となっていたキーウ訪問も実現した。3月、インドへの外遊中に突然、ウクライナへ飛び、ゼレンスキー大統領との会談を果たしている。G7首脳でゼレンスキー氏と会っていないのは岸田さんだけだったから、広島サミット前にどうしても会っておきたかったのである。

これでG7サミットが終了したら、次は日本外交にとって最大の難問、中国に取り組むのが自然な流れになると思うのである。中国側としても、約半年でこれだけの実績を積み上げた岸田さんには、まともに向き合わざるをえないだろう。

この間、林芳正氏が外務大臣になったことで、しばらく空席となっていた日中友好議連の会長に二階俊博前自民党幹事長が就任した。国会終了後に、何か動きがあるのではないかと予想している。

(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)

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