残念ながら、ミャンマーは2021年に軍事政権に戻ってしまいましたが、クーデターが起こらなかったとしても、製造業強化に重点を置いた政策がなければ、国の成長も実現できなかったのではないかと筆者は考えています。
ミャンマーとは程度は異なりますが、現在のインドも、製造業がそれほど強くありません。インドのGDPに占める製造業の割合(付加価値ベース)は15%程度です。中国は26%、タイやベトナムなども同水準です。
中国の賃金が上昇する中、同国製造業の移転先として、ASEAN諸国は候補にあがりますが、規模が大きく、吸収力があるはずのインドという声はあまり聞きません。ここからもインド製造業の弱さがうかがえます。
インドと中国で違う外資への対応
インド政府も外資誘致を政策として掲げ、外資の流入も増えていますが、サービス業向けが多く、製造業向けは十分とは言えません。国内に零細企業が多く、国内産業保護の意識が強いことも影響しています。
中国は1994年に始まった人口ボーナス期にタイミングをあわせ、2001年にWTOに加盟し、製造業を中心に積極的に外資を導入しました。人口ボーナス期は2010年に終了しましたが、この好機を生かし、「世界の製造工場」の地位を確立し高成長を実現したことは偶然ではなく、理にかなった政策の成果と言えます。
インドには経済・社会構造上の課題も数多くあります。インフラが十分に整備されておらず、また、通関の手続きなどにも時間と手間がかかります。税制が複雑かつ曖昧で、進出した外国企業が何年も経ってから多額の追徴を課せられ、長期間にわたる裁判対応など過剰な労力を強いられることも多々あります。
モディ政権誕生からすでに9年が経ちますが、改革はまだ道半ばです。今後、同政権が、製造業強化を含め、人口ボーナス期を最大限生かせる政策や改革を実行できるかが注目されます。残された時間はそれほど長くありません。
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