「生産年齢人口」の割合が上昇し、かつ、「生産年齢人口」が「非生産年齢人口(15歳未満及び65歳以上)」の2倍以上となる期間を「人口ボーナス期」と呼び、特に経済成長が加速すると言われています。インドの「人口ボーナス期」は、2017年に始まり、2030年前半まで続くとみられています。
このように経済との関係でみると、インドの人口は、「規模」のみならず、「先行き」「質」も完璧とも言える状況です。今後、経済成長の加速が期待されるのも頷けます。
人口要因だけでは経済成長はしない
しかし、ここで考えなければならないのは、人口要因が良好であれば、経済成長が保証されるのかということです。答えは「No」で、いくら追い風(良好な人口要因)が吹いても、その風を捉える「帆」をきちんと張らなければ、船は進みません(経済成長しない)。
では、その「帆」とは何でしょうか。「帆」は、良好な人口要因を生かす適切な経済政策であり、最も重要な点は、生産年齢人口の増加分に見合う「雇用」を生み出すことです。
インドでは、生産年齢人口が毎年1000万人規模で増えています。労働参加率等を考慮すると、最低でも毎年500万人以上の雇用が増えなければ、失業者が増え、経済成長どころか、社会不安にもつながりかねません。
さらに言えば、その雇用も高い付加価値を生み出す産業で増えることが求められます。
サービス業などは、多くの雇用を吸収できますが、国民の所得を十分に増やすだけの「付加価値」を生み出すことが難しい分野です。現在のインドの一人当たりGDPは約2500ドルしかなく、この発展段階の国では、高い付加価値を生み出すことができる「製造業」の発展が成長のカギとなります。
人口が多い国というと、「製造業」を飛び越えて、消費市場を狙った「サービス産業」に目が行きがちです。近年では筆者が駐在していた時のミャンマーがそうでした。
ミャンマーは、2011年に、それまでの軍事政権による鎖国政策から、改革開放路線に舵を切り、日本の政府もメディアも企業も「人口5000万人を擁する最後のフロンティア」とはやしたて、消費市場を狙った投資が相次ぎました。
しかし、当時のミャンマーの一人当たりGDPは1000ドル程度です。開国当初は、これまでの軍事政権下で買うものがなく、使おうにも使えなかった貯蓄を取り崩し、一時的に消費も盛り上がりましたが、同国には、製造業、特に、外貨を稼げる輸出競争力のある製造業がほとんどなかったため、国民の所得は伸び悩み、消費も期待したほど増えませんでした。
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