日本経済に「インフレ圧力」が高まるとどうなるか 教養としての金利や問題点を考える【後編】

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
インフレ圧力が高まるとどうなるのでしょうか(写真: freeangle / PIXTA)
前編では「金利」をキーとしてに非伝統的金融政策の効果などについて簡単に解説しつつ、その懸念となる弊害について2つ指摘しました。本記事では、引き続き田渕直也氏の新刊『教養としての「金利」』からの一部抜粋・編集に基づき、懸念される弊害として最後の1つ、「出口問題」と市場機能の喪失について解説します。

非伝統的金融政策で懸念される弊害の3点目は、出口問題です。

そもそもごく普通の金融緩和政策でも、それを終了して金融引締め政策へ転換するときには、それまで潤沢に流れていたお金の流れが変わり、金融市場にさまざまなストレスがかかります。

金融緩和政策の極みともいえる非伝統的金融政策を終了させるときに、より大きな混乱が起きることは十分に予想されることです。その政策が長期間続けられてきたものであれば、とりわけそのリスクは高まるでしょう。

たとえば、量的金融緩和政策では中央銀行が債券等の巨大な買い手になるわけですから、政策の終了はその買い手がいなくなることを意味します。

さらに中央銀行が手持ちの債券等を市中銀行に売却する量的金融引締め政策が発動されると、中央銀行が今度は巨大な売り手に変身します。

ちょっとしたことで相場が乱高下

このような巨大な買い手の消滅や売り手への変身は、たんに債券価格の下落(金利の上昇)を招くだけでなく、そもそも買い手が不足して取引が十分に行なわれなくなり、したがって相場がちょっとしたことで乱高下する危険性をもたらします。

売り手も買い手も十分にいて取引が円滑に行なわれる性質を市場流動性といいますが、量的金融緩和政策の転換時にはこの市場流動性が失われる可能性があるのです。

そうすると、ちょっとしたことで価格が大きく変化したり、そもそも思いどおりに取引ができなくなって、投資家に思わぬ損失を強いたり、そもそもリスクを機動的にヘッジ(回避)することを困難にしてしまったりします。

次ページとくに注意を要する点
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事