日本経済に「インフレ圧力」が高まるとどうなるか 教養としての金利や問題点を考える【後編】

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また、経済そのものが極めて緩和的な金融環境に慣れすぎてしまうと、金融引締めに耐えられなくなるセクターや企業が出てくることも考えられます。もちろんゾンビ企業が厳しい状況に直面するであろうこともそのひとつです。

そうしたなかで、とくに注意を要するのが、国や中央銀行の信用力です。たとえば日銀が日本国債を保有する額は、2022年12月末時点で564兆円に上り、国債発行残高に占める割合は実に50%を大きく超えています。

ざっくりいえば、国が財政赤字を埋めるために発行する国債を、自分でお金を刷ることができる日銀がせっせと買っているわけです。

財政赤字を穴埋めするために、中央銀行が国債を直接引き受けることを財政ファイナンスと呼んでいて、インフレを引き起こす危険性があるということで原則として法律で禁止されています。

日銀は、国債を政府から直接買い取っているわけではなく、金融政策の一環として市場で国債を購入しているだけなので財政ファイナンスではないとしていますが、実質的にはそれほど変わらず、少なくとも健全な姿とは言いがたいでしょう。

それでも、インフレが起きず、いまの超金融緩和政策を維持できるうちは問題が表面化することはありません。金利が上昇さえしなければ買った債券に損失が発生することもないので、どんどんお金を刷って日銀が買えばいいだけです。

インフレ圧力が高まったらどうなるのか

しかし、本当に日本経済にインフレ圧力が高まってきたらどうなるでしょうか。

インフレを抑制するためには、金融を引き締め、金利の上昇を促す必要がでてきます。しかし、金利が上昇すると、日銀が保有する膨大な額の国債の価格が下落し、買ったときの値段を大幅に下回って巨額の評価損失を生み出します。

そうすると、日銀は純資産が5兆円ほどしかありませんから、簡単に実質債務超過に陥ってしまうでしょう。もっとも、それがどういう問題につながるかはきちんと整理して考える必要があります。

ここで、債券価格と利回りの関係を思い出しましょう。一般的な利回り(終利)は、満期まで保有した場合の収益率のことでした。

ただ、途中で売却するとそのときの売却価格によって大幅な売却損が発生し、所有期間利回りは大きく悪化する可能性があります。

評価損失というのは、そのような場合に、いま市場価格で売却したらどのくらいの売却損が出るかを示す数字です。

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