中国「残酷工場」は、すでに過去の話なのか 世界最大の労働市場には闇と曙光が並存

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注目すべきはこの内容を自社、関連会社だけではなく、サプライヤーにまで拡大していることだ。さらには「2次サプライヤーへの展開」を謳い、サプライチェーン全体への波及を目指している。

しかし先に挙げたように、中国企業の中には、モラルや人権意識が欠如したようなところもある。

掲げる理想と、中国の現実には大きなギャップがある。「美しいスローガンではあるが、絵に描いた餅にしかならないのではないか」と思われる方も多いだろう。

実際のところ、どうなのだろうか。「必ず、取引先のトップに取り組む意義を理解してもらいます」と富士ゼロックス中国総代表室総監の野村浩一氏はそう語る。

必要であればトップが出向いて本気度を伝える

「意義が理解いただけない場合は、調達部長、必要であれば総経理などトップが出向くことで、本気度を伝えます。そして、相手のトップに取り組む必然性を理解してもらい、コミットしていただく。一度だけではなく、継続的に訪問し、進捗を粘り強く確認。合わせて、我が社で培ったノウハウを提供します。そういう活動を7年間続けて来た結果、サプライヤーの重要項目の実現率は90%に近づいています」

経営トップ・営業・品質管理部長・業務担当者・組合代表者などが参加し、1つひとつ項目を確認する様子

「環境問題や社会問題に対処できない企業の商品は、買ってもらえない時代になりつつある。実際、CSRの管理がきちんとできない工場は品質上の問題や、労働者を安定確保できないなど様々な問題があることが分かって来ました。きれいごとではなく、自社の環境管理や労務管理が高い品質や強いコスト体質を作ることをサプライヤーが理解し、実行してもらうことで、私たちの商品の競争力は高まるのです」

野村氏は、CSR活動を「企業の競争力を高める活動」であると位置づける。富士ゼロックス最大の生産拠点富士ゼロックス深圳では、NGOと組んで、工員に対する“社会人教育”プログラムを多数作ってきた。

今では、年間数十個のプログラムを実施するに至っている。

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