ーー出資者側には、「業界構造は改善されている。何が問題なのか」と開き直る関係者もいます。
マシになっているか否か、という次元の話ではない。根深いうえに「問題を指摘したほうが悪い」といった空気が漂っている。
――自社の制作キャパシティに限界がある中、トムスが企画・製作などを担い、外部の制作会社との協業を軸とする「UNLIMITED PRODUCEプロジェクト」が始動しています。
自らがプロデュース側に回った時、私たちが今まで製作委員会から委託されていた条件をそのまま制作会社に突きつければ、同じように彼らが苦しむことになる。そのため、私たちが外の制作会社と組むときは、制作側にきちんと利益が出るフェアなスキームに変えたかった。
具体的には、当社が幹事を務める製作委員会で利益が発生したら一定割合の成功報酬を制作会社に還元することにした。制作費を高く設定するやり方もあるが、制作の現場ではできるだけいい作品を作ろうと、制作費が増えればその分目一杯使ってしまうため、得策とは言えない。
――2023年4月からは、既存従業員の基本給を平均30%程度引き上げ、21万円だった新卒初任給は26万円になりました。
制作とプロデュースの2段構えで収益を得られるようになり、一定まで利益水準を引き上げられたことが大きい。親会社のセガに反対されることもなかった。このニュースを聞いたベテランのアニメ監督から、「アニメ業界もやっと少し変わるかも。その第一歩だね」と言ってもらえ、すごく嬉しかった。
アニメ業界は、昔から変わらない金額で作画を請け負う、職人のような人たちに支えられている。業界関係者はそれが当たり前だと思っているが、今の若い人たちはそうではない。アニメーターのなり手は減っていくばかりだ。
日本のアニメは世界中でこれほど人気なのに、このままいくと日本のアニメ制作会社は無くなってしまう。
僕らだけが「アニメーターのお給料を上げましょう」と主張したところで、業界全体が動かないと意味がない。
自社での取り組みにとどまらず、(UNLIMITED PRODUCEプロジェクトのような枠組みで)協業する制作会社にも利益が残るようにすることで、アニメ制作の関係者全体が潤うベースを作らなくてはならない。
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