4月末、大ヒットアニメ映画『すずめの戸締まり』を手がけたコミックス・ウェーブ・フィルムの角南一城常務は、新海誠監督と韓国・金浦(キンポ)国際空港に降り立った。
約2カ月にわたり、9カ国・13都市を巡った上映などのワールドツアーも最終盤。平日の昼間にもかかわらずボディーガードが必要なほどの新海監督への出待ちを見届け、ソウル市内に入った。
新海監督のサイン会を開催するために訪れたのが、日本でもおなじみのアニメ専門店・アニメイト。10年ほど前に訪れた別のアニメイトの海外店舗のように、「オタク」なファンが集っている雰囲気を想像していた角南常務は、広がる景色に衝撃を受けた。
日本アニメは最早「サブカル」ではない
店を構えるエリアは、“韓国の原宿”ともいわれる若者の街・ホンデ。店内の様子もオタク色はまるでなく、若者たちが流行のファッションアイテムかのようにアニメグッズを手に取る。角南常務は確信した。「もはや日本アニメはサブカルチャーではない。世界のメインカルチャーになったんだ──」。
連日、海外における日本アニメの快挙を知らせるニュースが、ネットやテレビを沸き立たせている。3月に中国でも公開された『すずめの戸締まり』は、現地で興行収入150億円を突破。並行して、4月20日には人気バスケットボール漫画『SLAM DUNK』のアニメ映画も同国で公開され、たちまち同120億円に到達した。
これは一過性の現象ではない。国内で社会現象となった『鬼滅の刃』の劇場版も2021年、米国で公開された外国語映画のオープニング興行成績で歴代1位に輝いた。
一方、ブラジルでは2021年8月からの1年間で、日本アニメの海賊版被害が2000億円規模で発生。業界団体と同国司法省による撲滅の一環で、今年に入って被疑者の家宅捜索が敢行された。
日本アニメは世界で熱狂を飛び越え、混沌すら巻き起こすムーブメントとなっている。
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