日本のアニメ産業の市場規模は2010年代の序盤まで1兆3000億円程度で停滞していた。
潮目を変えたのが動画配信の普及だ。米国のネットフリックスやアマゾン、アニメ専門のクランチロールなど、続々と日本アニメを買い付けるプレーヤーが台頭。全世界でタイムラグなく日本の人気アニメが伝播するようになった。
1話当たり数億円で制作される米ハリウッドや韓国の実写ドラマに対し、日本のアニメは高くても1話5000万円程度で済む。そのコストパフォーマンスのよさも配信事業者に支持された一因だ。
国内市場がほぼ横ばいで推移する中、海賊版ユーザーが正規市場に流れ込んだ結果、海外のアニメ映像やグッズ販売が急伸し、2021年には市場規模が2兆7422億円に。気づけばこの10年で市場は2倍以上になった。今の日本には数少ない成長産業だ。
『君の名は。』のヒットが転機に
『すずめの戸締まり』の海外配給を担当し、2009年から日本映画の海外向け営業をし続けてきた東宝の竹田晃洋氏は、アニメの快進撃を最前線で見届けてきた一人だ。
当初、独ベルリンや仏カンヌなどの映画祭にいくら日本の実写映画を持ち込んでも、配給会社との商談スケジュールはなかなか埋まらなかったという。転機は2016年公開のアニメ映画『君の名は。』のヒットだった。
日本の2Dアニメを上映すれば思ったよりも客が入るのだと、世界中で認知が進んだ。その次の新海誠作品『天気の子』を海外に展開するタイミングでは、独立系配給会社を中心に、以前を大きく上回る問い合わせが入った。
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