原発事故で取り残された双葉病院の患者の「その後」が判明、今もなお数人が身元不明のまま、県内外の病院に入院
3月15日に起きた福島第一原子力発電所の水素爆発事故に際して、医療法人博文会双葉病院(福島県大熊町、鈴木市郎院長)の院長や医師、看護師らが入院患者339人のうち130人を病院内に残したまま避難した問題で、取り残されていた入院患者のほとんどが身元不明のまま、福島県や新潟県、栃木県内の病院に搬送されていたことが東洋経済記者の取材でわかった。
取材に応じた福島県災害対策本部救護班の上野隆司副班長によれば、「現在も患者数人の氏名や住所が不明のままになっている。身元調査に全力を挙げているが、調査は難航している」という。
双葉病院の入院患者については、いわき市内の避難所である福島県立いわき光洋高校への搬送途中または搬送後に14人が死亡していたことが3月17日までに判明。その後、福島市などの避難所に搬送された患者の中でも7人の死亡者が出ていたこともわかった。その事実は大手新聞やテレビなどで大きく報じられた。
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その一方で、生き延びた患者の多くも、氏名も住所もわからないまま、避難所や病院を転々とさせられていた。
福島県によれば、取り残されていた入院患者130人のうち、「100人強が福島県内、20人が新潟県内、4人が栃木県内の病院などに搬送された。搬送先の病院の数は30以上にのぼるうえ、搬送先を3度も4度も転々としている患者さんもいる」(福島県)という。
こうした問題が起きたのは、病院が原発事故による避難指示区域にあるため患者のカルテなどを持ち出せないことに加え、病院の医師や看護師が付き添わないまま、患者の搬送が行われたことが原因として挙げられる。その結果、福島県は「まったく情報がない状態」(上野副班長)で搬送手続きを進めた。