原発事故で取り残された双葉病院の患者の「その後」が判明、今もなお数人が身元不明のまま、県内外の病院に入院

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 受け入れ先自治体である新潟県福祉保健部の高橋英樹・いのちと心の支援室長によれば、「患者さんが新潟県にいらっしゃったときは、氏名も住所もまったくわからず、避難所にあったベッドの番号だけで管理されていた」という。その後、双葉病院関係者による情報提供を踏まえた福島県の「突合(とつごう)作業」により、患者の身元確認は進捗していったものの、福島県によれば、いまだに数人の身元不明者が存在しているという。

搬送途中で死亡した患者の遺族からも、病院の対応に疑念が持たれている。病院に取り残された患者で、自衛隊が救出した後にいわき光洋高校への搬送途中で死亡した70歳台女性の遺族は、「院長や病院職員が患者を置いて先に避難したことは今も納得できない」と語る。そのうえで「死亡後も病院関係者からはその後も何の連絡もなく、死亡の経緯に関する説明もまったくない」という。

遺族によれば、「私の息子が福島県に問い合わせたところ、パジャマに縫いつけられていた名前から遺体がいわき市内のスポーツ施設に安置されていることが判明。3月19日に遺体安置所に出向いて身元を確認した」という。その時も病院職員の姿はなかったうえ、入手した死亡診断書には「死亡した時 平成23年3月14日頃」と書かれており、事情を詳しく知らない別の病院の医師が死亡診断書に署名していた。

原発事故のさなかだったとはいえ、患者の救出に大きな問題があったと言わざるを得ない。

なお、双葉病院の現在の連絡先であるいわき開成病院を通じて鈴木院長への取材協力を依頼したが、「院長はほかの病院へのあいさつ回りでここにはいない。取材対応の者も不在にしている」として、4月8日までに話を聞くことはできなかった。
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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