日本で衰退「チカラめし」タイで復活期す納得理由 味付けやメニューは日本と同じ、香港でも展開
味付けやメニューは日本とまったく同じだ。むしろパートナー側が、日本の味をそのままタイに持っていきたいとこだわった。
「そのために必要な調理などのトレーニングは大変でした」(長澤社長)
不十分なオペレーションから大量閉店となった過去の教訓を生かし、しっかりとした店づくりを目指した。
出店したタニヤ通りは「日本人街」ともいわれ、数多くの日系飲食店やクラブ、ゴルフショップなどがひしめく。1月には「ドン・キホーテ」もオープンした。日本人駐在員や出張者が行き交う一角だが、「東京チカラめし」のお客は8割がタイ人なのだとか。
現地在住の日本人も意識しつつ、メインとなる客層はあくまでタイ人なのだが、価格は日本よりも高い。主力メニューの「焼き牛丼」は並が190バーツ(約758円)、大で240バーツ(約958円)となっている。日本では並580円、大650円なので、だいぶ割高だ。それでもバンコクのほうはタイ人客で賑わっているという。
「タイ人のお客さまはサイドメニューを頼まれる方も多いので、客単価では1000円以上と日本より高くなっています。タイの日本食業界はその価格が成り立つマーケットといえます」(長澤社長)
タイでも原材料の高騰が飲食業を圧迫しているものの、日本を上回る客単価によってその分を回収できているという。
「経済成長による可処分所得の上昇によって、タイでは外食産業が大きく伸びていることを実感しています」(長澤社長)
日系飲食チェーンが軒並み進出するタイ
JETRO(日本貿易振興機構)によれば、タイにおける日本食レストランの数は5325店舗となった(2022年末時点)。前年から955店舗、21.9%増という著しい成長を見せ、初めて5000店舗を突破したが、タイではもはや日本食が一大産業となっている。
バンコクでも地方都市でも、建設が続くショッピングモールの中では、寿司やしゃぶしゃぶ、ラーメンなどの日本食が欠かせない。「大戸屋」「CoCo壱番屋」「かつや」「モスバーガー」「世界の山ちゃん」「丸亀製麺」「築地銀だこ」「天丼てんや」などなど、大手チェーン店もタイに続々と進出し、しのぎを削る。「東京チカラめし」のライバルといえる牛丼チェーンも「吉野家」と「すき家」がすでに定着している。
さらに近年では細分化が進み、同じラーメンでも北海道風から福岡豚骨、家系に至るまで幅広い味が楽しめるようになった。また、タイ人経営でタイ人の好みに合わせた日本食レストランも無数にあるし、タイ名物のナイトマーケットをのぞけば、たこ焼きやタイ風寿司の格安屋台が並ぶ。庶民層にまで日本食は浸透しているといえる。この細分化、多様化の中で「東京チカラめし」の「焼き牛丼」も受け入れられているようだ。
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