「出勤前にお腹が下る」腸の中で起きていること ストレスの判定は腸内細菌が実は行っている

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そこで研究者は次のような仮説を立てたのです。脳から腸に何らかの信号が出て、それが腸の調子を変えているのではないかということです。

解析技術が発展したこともあり、これまでの研究では副腎皮質刺激ホルモン放出因子(cortictropin releasing factor; CRF)や(thyrotropin releasing hormone; TRH)といった視床下部ホルモンが、視床下部、下垂体、副腎軸(HPA軸)を活性化するだけでなく、中枢神経系を介して消化管機能を調節することが明らかにされてきました。

つまり、脳がホルモンを通じて腸をコントロールしているのではないかということが、ホルモンの作用からわかってきたのです。

こうした考え方に対して、腸のほうも何らかのコントロールをしているのでは、という仮説を立てる研究者も増えてきました。

腸に関する研究が進み、腸で生じたさまざまな生理的、病理的な変化が脳へと伝えられて、脳内の情報処理機能に影響を与えることも明らかになってきました。前述したように脳腸相関という言葉がありましたが、最近では腸も脳に影響を与えているということで、腸脳相関とも呼ばれています。さらに、脳と腸は相互に情報伝達・情報交換を行っていて、互いに作用を及ぼしあう関係にあることがわかっています。

具体的には脳と腸はホルモンや細胞に指令を与えるサイトカイン(血中を流れる情報タンパク質)などを利用し、自律神経系のネットワークを介した作用によって、互いに影響しあう関係にあるのです。

最近、医療技術が発展することによって、この相関に新しい影響があることがわかってきました。それが腸内細菌の存在です。腸内に生息する常在細菌は約1000種、約100兆個とも言われ、100万以上の多彩な遺伝子を持っています。あるときは直接的に、あるときには神経の活動に影響を与える物質を生成しながら、腸脳相関の主役になりつつあります。「腸内細菌—脳—腸」相関といった言葉もあり、最も注目の研究領域となっているのです。

心と体にかかるストレスの判定は腸内細菌が行っている

「今日も上司に怒られて、胃が痛いな……」なんて、私たちはよく言いますが、実は胃は消化器官の中でも最も弱い臓器として数々の実験からわかっています。胃は強いストレス要因があると、すぐに傷ついてしまうのです。

では、そのストレスの度合いを測定するような器官は私たちの身体の中にあるのでしょうか? 多くの方は脳がその役割を果たしていると感じるでしょう。しかし、実はそうではなく、腸内細菌がストレス情報を脳に送っているのではないかということが、わかってきました。

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