本当の優良企業とは、社員に投資する会社 自社株買いや配当増の前にやることがある

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中野:正直、昨年秋口にかけての動きを見て、「労働分配率が低下しているから企業の人件費抑制が続いている」などと騒ぐ必要はないと思うのですよ。

さっきも言いましたが、経営者は業績や今後の景気動向を見たうえで、賃上げするかどうかを判断するので、経済指標が改善したとしても即、賃上げには踏み切りませんよ。どうしてもそこにはタイムラグが生じます。

でも、世の中の動きを見ると、これからお給料は上がり始めるはずです。賃金が上がるときは正社員以外の層が先です。現に非正規社員の賃金って、今、ものすごい勢いで上がっていますよ。事務職のパートさんを雇うのに、これまでの時給より3割増くらいでないと人が採れません。つまり労働需給が、それだけ逼迫しているということですよ。有効求人倍率だって2015年1月の数字で1.14倍。完全雇用の状態です。だから、賃金はこれから確実に上がっていくのではないでしょうか。

渋澤:経営者が、未来に対して明るいイメージを持てるようになって初めて、これまでの働きに対する報いと、これからの期待を込めて賃上げに踏み切るわけですからね。その意味では、経営者が明るい気持ちになれるような材料がそろわないとね。

円安と原油安は日本経済の「ツインエンジン」に?

中野:でも、材料は大分そろっているでしょう。1ドル=120円で為替が安定的に推移するなら、企業業績全体では十分ポジティブな事業環境ですし、原油価格が1バレル=50ドル前後で推移するなら、これも企業にとっては大きなコスト低下要因になります。

つまり円安、原油安は、日本の実体経済にとっては「成長のツインエンジン」になります。内需だって、インバウンド効果もあって、百貨店の売上げがものすごい勢いで伸びています。

確かに足元を見れば、昨年4月の消費税率引き上げに、賃金上昇が追い付かなかったという側面はありますが、2015年度は前年度の反動も加わって、外需、内需共にかなり活発になると思います。藤野さんじゃないけれども、これだけの好材料がそろっているにもかかわらず賃上げをしなかったら、日本企業の経営は環境適応力を失っているわけで、いくらアベノミクスの笛を吹いたとしても、日本経済の成長は期待できないでしょう。

藤野:この間、経済産業省と日本取引所グループが「健康経営」をテーマにした企業を選定しましたが、私は渋澤さんと一緒に、その審査委員を拝命しました。その選定作業を行っているとき(健康経営銘柄はこちら)、ちょっとおもしろいことに気づいたのですよ。それは、健康経営におカネを掛けている企業というのは、総じてROEが高くて、かつ株価がTOPIXをオーバーパフォームしているのです。ね、ちょっとおもしろいでしょ。

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