渋澤:従業員を大事にするかどうかというのは、賃金を上げるとか、健康管理にコストを掛けるとか、金銭で推し量れるものだけとはかぎらないと思います。コモンズ投信には「こどもトラスト」というプログラムがあって、0歳から15歳までの子どもを対象にしてコモンズ30ファンドを積立購入してもらっているのですが、そのファンドホルダーに、投資先企業の経営者に対する要望を聞いたことがあるのです。
そのとき、非常に印象的な回答がありました。それは、「社員を大事にして下さい」だったのです。その話を、投資家・アナリスト向けの会社説明会で当の経営者にお伝えしたところ、それまでやや構えていた身を乗り出すようにして聞いてくれたのです。
多くの経営者は、常に従業員のことを考えていますし、それはおカネだけでは量れないのでバランスシートには乗りませんが、何かの形で「見える化」する必要があります。
従業員のチャレンジに惜しまずにおカネを出せるか
中野:業績がいいのに賃金を上げないとなると、現金を抱え込んでじっとしている企業の姿が浮かんできますね。
藤野:ひとつだけ言えるのは、現預金を貯め込んだままにしている企業はダメだということです。リーマンショック時の記憶があって、現金を手元に置いておきたいという意識から脱せない企業もあるのですが、多額の現預金を手元に抱えていても、それは何の価値も生み出しません。
本来は投資するべきですし、投資対象がなければ、株主に還元するか、もしくは従業員に支払うかを経営者が判断して、バランスよく配分するべきなのです。まさにそれこそが経営感覚なのですが、いちばんやって欲しいのは、従業員がやりたいと思っているチャレンジに対して、惜しまずにおカネを出すことです。
これができていない企業は、本当にたくさんあります。よく「経営には選択と集中が大切だ」と言いますが、選択と集中と言ったって、ほとんどの場合、既存の事業ポートフォリオを組み替えているだけに過ぎません。これでは企業の成長は期待できない。本当に大事なのは、新たなチャレンジをしていくことなのです。
中野:最近、内部留保のおカネを自社株買いや増配に充てている企業が増えていますが、私としてはそれよりも、設備投資をしたり、あるいは従業員への投資に重点配分したりしてもらいたいと思います。企業にとって大事なのは、何といっても将来の成長であり、それを担うのは従業員にほかならないのですからね。
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