過酷労働でミス頻発…「オペ室ナース」衝撃の実態 「看護の日」に考える、看護師のまっとうな働き方
待機の当番は月4回ほど回ってくる。平均的には3~4割の確率で呼び出されるが、ベテランの工藤さんは「緊急オペは心臓や脳の難しい手術が多く、“1番拘束”の出番が最も多くなります」と話し、待機のうち6割以上で呼び出しがかかることもある。
心臓手術など難易度の高いオペに入った翌日は疲労で体調を崩しがちだという。家に帰ると「バタンキュー」。食事だけとってとにかく横になる。呼び出しのあった直後の勤務では、かろうじて目があいている状態。倦怠感が残ったまま手術につかなければならないのだ。
朝から疲労困憊…シフトそのものにも無理がある
待機だけでなく、シフトそのものにも無理がある。工藤さんら看護師は、「準夜勤」で16時30分から翌1時まで働き、その後は「遅番」で半日も経たない12時30分から21時まで勤務。その翌日が「日勤」で8時30分からというシフトに入ることもある。仕事がずれこみ残業になることもしばしばだ。
「そういう日は本当に大変です。オペ室の仕事が長くなり好きでもありますが、とにかく疲れていて、朝から、とにかく早く帰りたいと思いながらオペ室に入っています。もちろん、ミスは許されないので緊張感をもって当たりますが、既に疲労困憊しているので、やる気が出ないこともあるのです」
そもそもオペ室ナースが過酷な労働に追い込まれるのには、制度上の問題がある。同じ病院でも、患者が入院する病棟では夜勤があることを前提として診療報酬で看護師の配置基準が決められており、配置が手厚いほど病院の収入が増える仕組みがある。一方で、オペ室や外来には診療報酬上の看護師の配置基準がない。そのため、病院が“経営効率”を考えて人件費を抑制する方針であると、オペ室や外来に十分に看護師を配置しないケースがあることが、筆者の取材では散見されている。
工藤さんが勤める病院でもオペ室の人員配置はギリギリだが、地域の基幹病院でオペ件数は多い。工藤さんがオペ室ナースの一人当たりの年間手術件数を他の病院と比べたところ、1.5倍もあったという。それでも、病院経営側は看護師を増員してはくれない。
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