アメリカの民主主義が「機能不全」に陥った理由 極右化する保守と、大衆を軽んじるリベラル

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:私も民主的多元主義の再生には、多大な困難が伴うと思います。ただ、リンドが言っているように、その再生が無理だったら、民主主義の継続自体が無理だということなんです。

加えて、今の新自由主義的グローバリズムの世界秩序を変えないと、各国の中で中間団体を再生して、民主的多元主義をつくっていくことは不可能だと思います。例えば、資本家と労働組合が交渉するとしたら、今のグローバルな枠組みの下ですと、資本家側はそんなめんどくさいことをするより、仕事を海外にもっていくか、生産拠点自体を移転してしまうか、または入ってきた移民に任せるかすればいいのですから。

だから、最初に新自由主義的グローバリズムの国際経済の枠組みを変えることから手をつけないと駄目なんじゃないかと思うんですね。

佐藤:おっしゃる通りです。しかし「新自由主義的グローバリズムの世界秩序を変える」とは、具体的に何を意味するのか。

ずばり言ってしまえば、そのためにはリンドの説く「リベラル・ナショナリズム」ではなく、世界政府型のグローバリズムが必要ではないかと思うのです。地球規模の主権を持つ政府が多国籍企業を抑え込んで、「グローバル・ニューディール」とも呼ぶべき労働者階級擁護のシステムをつくったら、新自由主義からの転換は一気に達成されますよ。

けれども、そうなったら各国の主権も何もあったものではない。まして各国内における中間団体の再生はどうなるのか。いよいよ哲人王の支配が見えてきてしまいます。

新自由主義的グローバリズムを脱するシナリオ

:佐藤さんのおっしゃることもわかるんですけど、私はそこまでは言えないと思うんですよね。

例えば、各国の中で、今のグローバルな枠組みでは、庶民は決して政治の主人公に戻れないという理解が広まり、その反発から有力な国家に反グローバリズムの政権がいくつかできる。そうして、国際的な連携のもとで今の枠組みの改革を主導していく。こういうことは不可能ではないと、少し楽観的に思っています。

仮に、2020年の選挙でトランプが勝って、Brexitの後にジョンソンが勝って、そしてフランスやドイツなどもう一カ国ぐらいで保守的な政権ができれば、結構いい改革ができたのではないかと。こういう流れができれば、日本はまたアメリカに追従するでしょうから、国内でも新自由主義的グローバリズムに抗う動きが出てきたのではないかと思うのですが。

中野:ありえたし、トランプが負けたからそれが道半ばになったかというと、実はバイデン政権も、そんなにトランプ政権と変わらないかもしれない。

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