菅沼さんは2004年にポーラへ新卒入社。化粧品の商品企画に関わった後、グループ企業である株式会社ACROに出向し、コスメブランドTHREEの立ち上げを行う。今となっては定番の人気ブランドという印象のTHREEだが、実は苦労の連続だったという。
「市場そのものを作るところから始めないといけないので、もちろん順風満帆だったわけではなくて、最初の3年はほぼ売れない状況が続いていて。街でショッパーを見かけると驚いていたくらいなんです(笑)」
コスメブランドをゼロイチで立ち上げるという稀有な経験は、菅沼さんに「自信」と「つくること」の楽しさを教えてくれたわけだが、結果的にこれが「転職」につながることとなった。
ある程度のことなら1人でできる気がしていた
「出向先からポーラに戻ったあとは、1から10、10を100にする、ってことが求められていて。0から1を作り上げることをまたやりたいな、って思ったんです。
お恥ずかしい話、あの頃の自分は『1人でなんでもできる!』って思っていて。商品開発をすることができるし、開発依頼先のOEMさん、PR、店舗バイヤーさんと直接お仕事を自分がやらせていただく経験もしたことから、周囲と協力しなくても、ある程度のことなら1人でできちゃう気がしていたんです。
一方で、大きな会社ならではの組織のしがらみや人間関係を煩わしく感じているところもありました。『もっと小回りのきく環境に行って、もっと大きな権限を持つことができれば、自由にできるんじゃないかな』と思うようになりました」
権限を持ちたいのであれば、会社に残って出世すればいいのではと思う人もいるかもしれないが、実際、転職活動と並行して、菅沼さんは社内の昇進試験を受けていた。が、結果的にこれも菅沼さんの転職への意欲を高めることになった。
「うちの昇進試験は、多方面からの審査があります。でも、当時のわたしは仕事がめちゃくちゃ忙しくて。そうなると、『この競争に勝ち抜いてリーダー職を目指そう』という気持ちより、『自分が磨きたいものを磨く道に進もう』という考えになっていくんですよね」
ポーラの昇進試験は、それにかける準備期間が長く、試験回数が多いという。これは人事的な目線で見れば「しっかりしている」わけだが、当時の菅沼さんは「待てない!」という気持ちになったのだった。皮肉な話である。
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