そんなとき、知り合いのスタイリストから「アパレルメーカーで化粧品の商品開発をできる人を探している。一緒にコスメブランドを立ち上げないか?」という誘いを受けることになる。
「THREEの開発をしていたってことをきっかけに声をかけてもらったようでした。今までとは違う業界、アパレルメーカーでコスメ作れるなんて『超自由じゃん!』と感激したし、その頃はまだ0→1をやる余力が残ってたので、転職することにしたんです」
しかし、ここで大きな壁にぶつかった。
「『なんでもできる!』と思っていた私ですが、『業界が変わるとこんなにも仕事の進め方が違うのか』と驚愕することになったんです。というのも、アパレルと化粧品って近い業界って思われがちなんですけど、実際はビジネスモデルがまったく違うんです。
例えば、アパレルだと1カ月もあればTシャツを作ることができる。しかも10枚からでも作れる。一方で、化粧品は作るのに1年以上かかって、ロットも3000個からだったりする。アパレルはセール文化が当たり前。化粧品はセールをしない。化粧品は同じものを使い続けるけど、アパレルはそうじゃない……。
そういったビジネス面の違いを社内で説明するのに、とても苦労したんです。チームを組んでやっていましたが、いい人であったとしても、育ってきた文化が違うと、コミュニケーションを取るのにも苦戦するんです。結果、私は深夜まで働くことも多く、気づけば40代になっていて、昔のように働けるわけでもない……ひとり深夜のオフィスで、周囲の人々の大切さを、身に染みて感じる日々でした」
従業員数が連結で4000人を超えるなど、規模の大きな会社であるポーラ。新しい研究知見を商品開発に反映し販売する、バリューチェーンに沿った組織体制が確立されているが、そのメリットを、退職後により深く理解したのだった。
組織風土が少し変化したポーラ
この経験を通して、「1人では何もできないこと」「チームワークの重要性」「言わずもがなを共有できるありがたさ」などを改めて実感した菅沼さん。そんなある日、ポーラに出戻りするきっかけが訪れた。
「昔の上司から『また化粧品一緒に作らない?』と連絡がきたんです。最初は、委託先を紹介してって意味だと思ったんですが違って。当時は商品開発の真っ最中だったので、最初は軽い反応をしていたんですが、話を聞いていくうちに、少しポーラの組織風土が変わった印象を受けました。
そこからお互いが今どんなことをしているかっていう話になって。その流れで、『面接受けてみない?』と提案を受けました。『まぁ、受けるだけならタダだしな(笑)』と思って入社試験を受けました。
面接のときは、ミッションの確認もして。『メークが弱いから立て直してほしい!』と言われて、よし!と思ったら、箱を開けて見たらスキンケアでした(笑)。でも、そのあと、ちゃんと再度、ミッションの確認をしました。なんのミッションかがわからないと、働く目的を見失うと思ったんです」
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