駐日アメリカ大使「半導体で中国に助勢はしない」 「サプライチェーン同盟」をインタビューで語る

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──大使は以前の講演で、企業のサプライチェーンで重視されるものが、経済効率性から安定性に移ったと話していました。安定性を重視すると製品当たりのコストが高くなりますが、誰が費用を払うのでしょうか。

過去30年間はコスト効率が(サプライチェーン構築の)原動力だったが、安定性と持続可能性に取って代わられつつある。一例を挙げると、スマートフォン大手のアップルの工場は、中国からインドに移転しつつある。そして、多くのほかの企業も後に続いている。

取材に応じるエマニュエル駐日米大使
Rahm Emanuel(ラーム・エマニュエル)/1959年生まれ。1985年ノースウェスタン大学の修士号取得。1993〜1998年、クリントン政権で政策・政治担当の大統領上級顧問。2002〜2008年、イリノイ州選出の連邦下院議員。2008〜2010年、オバマ政権で大統領の首席補佐官。2011〜2019年シカゴ市長。2022年1月に駐日アメリカ大使として日本着任(撮影:尾形文繁)

ある日突然、制裁を受けたりブラックリストに載せられたりするリスクは冒せない。多くの国や企業は、そのようなリスクを負うことのない国で生産するほうがよいと判断した。安定性や持続可能性には価値がある。

制裁措置を受けるなどのリスクは、消費者からするとモノが手に入らないリスク。予見可能性のあるほうが好ましいので、そちらにお金を払う。

「フレンドショアリング(Friend-shoring)」という、日米や日韓といった同盟国間でのサプライチェーンの融通がよく話題にのぼる。そこからさらに安定性を維持する方法として、「Acquaintance(知人)-shoring」を進めるべきだ。

これは「友達ではないけれども知り合いである」ということ。たとえば、ベトナムとは経済的な統合性を取りたいとは思っているが、同盟国でもなければ近しい友人でもない。知り合いだ。

過去に中国は市場から追い出した

──2018年ごろから米中の摩擦が先鋭化しています。半導体では、先端品などの対中輸出規制を強め、日本やオランダに協調を求めました。ただ、中国との関係性が各国異なる中、どこまで協調できるのでしょうか。

われわれの団結は強く、協力をすれば効果的に働く。

中国には、日本のテック企業を市場から追い出した過去がある。たとえば太陽光発電。中国が技術を取り込み、多額の補助金を与え低コストで生産できるようにして、日本企業は太陽光発電の市場から追い出されてしまった。EV(電気自動車)でも重要鉱物でも、中国は同じことをしている。

これが半導体でも起きるかもしれない。日米以外の国々も、4年前よりもリスクを強く感じている。みんながこうした脆弱性の存在を理解している。ただ、その脆弱性を除くためにどれだけやるかは、それぞれの国による。

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