駐日アメリカ大使「半導体で中国に助勢はしない」 「サプライチェーン同盟」をインタビューで語る
──最先端半導体の国産化を目指す日本のラピダスは、IBMから技術提供を受けます。ただ、日本の半導体産業の世界シェアは1988年をピークに右肩下がり。そうした状況で日本との関係を深めているのはなぜですか。
日本はアメリカにとって大きな同盟国。サプライチェーンのパートナーになるのは自然な流れだった。まず、半導体のサプライチェーンでは、東京エレクトロンなど日本企業18社が製造装置、鉱物、材料、パッケージングなどの特定分野で支配的な立場にある。ロジック半導体でもメモリでも、日本企業なくして半導体は作れない。
次に、「コロナ(Covid)、紛争(Conflict)、威圧(Coercion)」という「3つのC」がある。
コロナでいうと、医療用マスクやガウンの生産を依存していた中国からの供給が止まったことで、それらの入手が難しくなった。さらにロシアによる戦争、(コロナの発生源の調査を主張したオーストラリアに対して大麦の関税上乗せをするなどの)中国による威圧。これらによってあらゆる人々がサプライチェーンに脆弱性があると認識し出した。
半導体産業では次のようなことが起こった。半導体がサプライチェーンの中で重要だと気づかされ、経済的威圧による脆弱性が露呈した。そして、われわれがライバルのために犠牲を払うことはないとわかった。
半導体の製造において、台湾のTSMCは大きな役目を果たしており、韓国も同じ役割を担っている。アメリカは設計で、オランダはEUV(極端紫外線)露光装置で支配的な役割にある。オランダや台湾などと同じように、安全保障の面で日米は協力していく。ライバルである中国に、われわれが助勢することはない。
日米含めた5カ国で協力できる
──製造装置などの製品以外にも日米で協力できることはありますか。
サプライチェーンをしっかりと維持することだ。一国で維持するよりも、一緒のほうが強くなれる。日本は重要なプレーヤーであり、日米の協力体制が強ければ、韓国や台湾やオランダとも強い協力体制を敷く助けとなる。日米は整合性の取れた形で足並みがそろっているので、これら5カ国が間違うことはない。