駐日アメリカ大使「半導体で中国に助勢はしない」 「サプライチェーン同盟」をインタビューで語る

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――対中輸出規制を受けて中国が自国半導体産業の育成に力を入れた結果、中国企業の技術力が上がるのではないでしょうか。

私たちもじっとしているわけではない。東京エレクトロンも、アメリカのインテル、AMD(アメリカの半導体ファブレスメーカー)も投資を続ける。ライバルにお金をあげることなく、進歩し続けていく。

過去10年間、中国では知的財産の盗用(Intellectual Property theft)、経済スパイ活動、多額の補助金による支援が行われてきた。それらをなかったことにして、脆弱性をそのままにすることもできるし、何か手を打つこともできる。ライバルのためにわれわれがお金や犠牲を払ったり、中国を後押ししたりすることはない。

ソニーが中国企業と50%ずつの出資比率で中国に投資するとして、10年後どうなっていると思いますか? 東京エレクトロンと中国企業が50%ずつ投資をしたら、どうなるでしょう? 10年後うまくいっていると思いますか? 答えは「ノー」だ。

単一のAI規制策定を

――AI(人工知能)についても質問があります。EU(欧州連合)は日米よりもAIへの規制を厳しく進めようとしています。協力できますか。

AIをどう制御していくか、みんなが頭を抱えている。4月末に行われたG7(主要7カ国)のデジタル・技術大臣会合では、パッチワークのようにつぎはぎにせず、一つの枠組みを持つほうがよいとの合意が得られた。日欧米の間でやり方や熱意は違うが、国ごとの規制を作るのではなく、(各国が)競争力を持ちながらも単一の規制の枠組みを作るほうがよい。

――中国をAI規制の枠組みに入れることはできますか。

そうできたらよいが、政治的な戦略、技術的、競争上などのさまざまな理由から、実現しないだろう。中国とは、AIについてだけを分離して戦略的な議論はできないとみている。AIは、気候問題と同様に包括した議論の中の一部という形になるだろう。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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