「子供嫌い」の日本、アメリカと価値観が違う背景 アメリカでは子供は小さな大人、日本では?

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アメリカには「成人」という明確な概念はありません。子供は本質的には大人と同じ生き物で、成長して連続的に大人になります。日本では、子供は「別の生き物」として生まれ、育ち、大人部屋への参加を認められ、昔は元服・今は成人式を迎えて「人間に成る(=成人)」わけです。

日本人に限らず、人は自分と同じ相手を好きになり、違う相手を嫌います。恋愛では、自分と価値観・嗜好が同じ相手を好きになり、「ちょっと違うなぁ」という相手を嫌います。古来、民族紛争が絶えないのも、自分と違う民族を嫌うからでしょう。理屈がどうこうではなく、人間の自然な感情です。

この自然な感情は、大人と子供の関係にも当てはまります。アメリカの大人は、自分と本質的に同じ子供のことが好きです。日本の大人は、「別の生き物」である子供を嫌います。これが、シンガー教授が主張する「日本人は子供が嫌い」な理由です。

家父長制が関係か

日本人の「大人と子供は別の生き物」という考え方は、どのように形成されたのでしょうか。伝統的に日本社会の特徴になっている家父長制が、関係しているのかもしれません(ここからは筆者の分析です)。

家父長制とは、一家の長である家長が、他の家族の人たちに対して絶対的な支配権をもつ家族制度です。家長は成人男性で、「一家の大黒柱」として弱者である女性・子供を養い、家を守ります。女性・子供は家長に隷属します。

家長の座は、嫡男(家長が産んだ男子、原則として長男)に継承されます。ただ、嫡男といっても元服・成人するまでは子供で、家長に養われる弱者です。元服・成人して大人になると、養われる弱者から養う強者に大変身します。

このように、家父長制における支配する家長(大人)と支配される子供という関係、ある時点を境に子供が大人に大変身するという慣行が、「大人と子供は別の生き物」という考え方に繋がっています。

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