「子供嫌い」の日本、アメリカと価値観が違う背景 アメリカでは子供は小さな大人、日本では?
家父長制は、中世に始まり、武家から商家・農家に広がり、1898年の民法制定でルール化されました。戦後の民法改正で廃止されましたが、今も戸籍・相続といった制度や冠婚葬祭などの慣習に家父長制が色濃く残っています。
そして、日本だけでなく中国・韓国など家父長制が濃厚な東アジア諸国で少子化が深刻になっていることから推察される通り、家父長制は今日の少子化に大きな影響を与えています。
戦前までの前近代社会では、家父長制は子供を増やす方向に作用しました。当時は、農業や家内制手工業が主体で、家長を中心に家族単位で働きました。家族は労働力なので、家長は将来の働き手になる子供を増やそうとします。
ところが、資本主義経済が発達した現代社会では、家族の人たちは家を離れて会社員として個人で働きます。女性も社会参加します。すると家父長制は、次のように子供を減らす方向に作用します。
家父長制が、日本の少子化の有力な原因に
① 家長である成人男性には、女性・子供を養えるだけの経済力が要求されます。日本・韓国では男性が正社員として働いていること、中国では男性が住居を購入していることが結婚の事実上の条件になっており、結婚のハードルが上がっています。
② 家父長制では、結婚してから子供を産む想定になっており、非嫡出子を認めていません。子供の総数に占める非嫡出子の割合は、日本2.3%、韓国1.9%とOECD平均の約40%を大きく下回っており、①の結婚難と相まって少子化を促します。
③ また、家父長制で女性は、家長に隷属し、家長や家族の人たちに奉仕する存在です。そのため、家事・介護の負担が女性にのしかかり、働く女性の出産・育児を困難にします。
このように、家父長制は、現代社会では子供の数を減らす方向に強く作用しています。家父長制が、今日の日本・中国・韓国の少子化の有力な原因になっていると考えられるのです。
1990年の「1.57ショック」以来、政府は子育て世帯への経済的支援など少子化対策を進めてきました。しかし、ここまでの考察から、経済的支援だけでなく、家族制度など社会の仕組みを改革し、家父長制の呪縛を解き放つ必要があります。
もちろん、社会の仕組みを変えるのは容易ではありません。夫婦別姓など家族制度を巡る最近の議論を見ると、「この国の形を変えるな」という保守層の主張は頑強です。保守層以外の国民の間でも、「社会を大きく変えてでも、少子化問題を何とか解決したい」という合意は形成されていません。
岸田首相は、2月1日の衆院予算委員会で同性婚について、「家族観や価値観、そして社会が変わってしまう」と懸念を表明しました。この発言は同性婚に限定したものでしょうか、それとも社会を変えること自体に後ろ向きなのでしょうか。岸田首相が進める「異次元の少子化対策」の行方が注目されます。
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