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東大医卒・森鴎外の「舞姫」背景知ると衝撃的な中身 神童エピソード多数、超エリートの小説ににじむ葛藤

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鴎外よ、これまであんなに神童一直線の人生だったのに、ドイツで何があったんだ、と周りの人は思ったのかもしれない。しかしここが一番森鴎外という人のすごいところで、実は鴎外は『舞姫』を書き終わった直後、弟に家族の前で朗読させていたのである。

『舞姫』のなかで、エリスと別れるかどうか悩む豊太郎に、「エリスとは別れろ、君には日本でのエリート街道があるじゃないか」と豊太郎の友人は説く。

またかの少女との関係は、よしや彼に誠ありとも、よしや情交は深くなりぬとも、人材を知りての恋にあらず、慣習といふ一種の惰性より生じたる交はりなり。意を決して断て、と。(『舞姫』)

そして豊太郎は悩んだ末、エリスを捨て、日本での出世の道を選択する。鴎外はこれを家族に朗読して聞かせて、いったい何を伝えたかったのだろう。「……というわけで、ドイツではいろいろありましたが、とりあえず決着をつけて帰ってきました!」と家族に報告したかったのだろうか。

ドイツで得た「初めての自由」

『舞姫』は現代の人間が読むと「豊太郎、最低」以外の感想が見つからない小説かもしれない。

しかし一方で、『舞姫』を読むと、「流されるままにここまで来てしまったけれど、それでもこれでよかったんだろうか、ほかの道もあったんじゃないだろうか」と考える1人の青年としての鴎外が確かに存在している。

地元の神童で、親に言われるがままに医者になり、そしてドイツ留学にまで至った鴎外。ドイツで得たのは、初めての自由だったのかもしれない。

『舞姫』の冒頭はこう始まる。

学問こそ猶心に飽き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、人の心の頼みがたきは言ふも更なり、われとわが心さへ変り易きをも悟り得たり。(『舞姫』)

人の心も、自分の心も、すぐに変わってしまう。――今の自分はそれを知ったのだ、と。「心なんてあてにできない」と思った鴎外は、この後戦争に向かう。そして軍医として、ある任務に当たるのだった。

(次回は5月11日配信予定です)

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