東証が異例の要請「PBR1倍割れ改善」の"真意" 東証の「キーマン」に聞く企業がやるべき具体策

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池田直隆/東京証券取引所 上場部企画グループ統括課長 2005年に株式会社東京証券取引所入社後、上場審査部を経て、2010年6月より現職。市場区分の見直し・スタートアップ育成に係る制度整備、コーポレート・ガバナンスの充実に向けた検討など、東証における上場制度全般に係る企画業務を担当(写真:筆者撮影)

――株価関連の指標は、自己資本利益率(ROE)や株価収益率(PER)、投下資本利益率(ROI)など多くあります。なぜ注目したのがPBRだったのでしょうか。

分析指標として収益性や市場評価など様々な要素を示唆しているのと、直感的にもわかりやすい面があるからです。今回の施策は多くの経営者にわかりやすい必要があります。経営者の一部には、営業など他の分野には詳しいが、会計分野に詳しくないという方もいると思います。もちろん、実際に会社に分析していただく際はPBRだけでなく、ROEなど他の指標も重要だと考えています。取引所が決めるものではありません。

――経営者の中には「株価はマーケットが決めるものだから、企業は介入できない」という人もいます。

確かに株価はマーケットで決めるものです。しかし、上場企業の経営者である以上は、投資家が自社の収益性や成長性をどのように評価しているか意識していただく責任はあると思います。特にPBRが1倍を割れているなど低い企業は、明らかにそれが示唆されているということですので、改善策を検討し、実行していく必要があると考えます。

東証がイメージするPBR改善策の具体的な改善策とは?

――東証は今回のPBRの改善策について「自社株買いや増配のみの対応や一過性の対応を期待するものではない」としています。一方で企業からは「具体的に何を発表するべきなのか」との声もあります。このプロジェクトの責任者として、PBRの具体的な改善策のイメージを教えてください。

一過性の対策ではなく、持続的な成長に向けた収益強化策が期待されているということです。例えば、成長分野への投資や事業の「選択と集中」などがあげられるということです。

――さらに具体的に伺いたいのですが、東証がイメージしているのは、工場など生産設備への投資なのでしょうか。あるいは研究開発(R&D)やDX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けた投資でしょうか。新商品の開発やM&A(合併・買収)、リスキリング(学び直し)など人的資本への投資も考えられます。最近は資本効率の改善に向けて政策保有株を売却して設備投資にあてる事例もあります。

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