双子パンダが「親離れ」成長への新たなステップ レイレイが「後ろ歩き」、この行動の意味は?

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パンダが親離れするのは、単独で生活する動物だから。動物園では基本的に1頭ずつ区切ったエリアで飼育するが、異性と交尾する間など、いくつか例外がある。その1つが子育て中で、母子は一緒に暮らす。

これは野生でも同じだ。野生では、子どもが1歳半から2歳ごろになると、母親が攻撃的な態度を示して、子どものひとり立ちを促す場合がある。

親離れの訓練を開始

上野動物園では、2023年2月ごろからシンシンの態度が変わってきた。双子が授乳をねだると、避けるように移動したり、低いうなり声を出したりすることが増えた。このまま同居を続けていると、双子に大きなケガを負わせる恐れがあるため、3月10日から親離れの訓練を始めた。双子が1歳8カ月の時だ。

訓練では「ステップ1~4」と4段階に分け、シンシンと離れて暮らす時間を徐々に長くしていった。親離れ前は、最後の母子一緒の様子が気になる観覧者で連日、長い行列ができた。

筆者が見た時は、シャオシャオが、シンシンによくじゃれついていた。外の丸太に座って竹を食べていたシャオシャオが、シンシンが外に出てきた途端、食べるのをやめて、シンシンに駆け寄ったこともある。

ちなみにこの丸太は、シャンシャンが東園で使っていたものと似ている。上野動物園に確認すると、「シャンシャンのおさがりではないですが、東園から持ってきています。リーリーが使用していたものだと思います」とのことだ。リーリーとシンシンは西園に来る前、東園にいた。

訓練のステップが進むと、シャオシャオは鳴いて母親を探すような行動を示し、レイレイはうろついた。「シャオシャオは以前からシンシンに積極的に絡むことが多かったため、おおむね予想していたとおりの反応でしたが、2頭に対して我関せずの態度をとりがちだったレイレイも、母親の不在という大きな変化には、さすがに落ち着かなかったようです」。

「しかし、2頭でいることが良い方向に働いたのか、お互いに寄り添いながら支え合うようにして、次第に以前のように落ち着いて採食や休息をするようになりました」(上野動物園)。

母子一緒の最後の日となった3月19日は、筆者が午前6時に上野動物園の弁天門前に着くと、すでに50人ほど並んでいた。園内の観覧列の待ち時間は、最長でおよそ2時間半に達した。

一方、シャンシャンの親離れ前の最後の公開日(2018年12月19日)、筆者は園内で4時間並んだ。「まだお母さんに甘えているのに、引き離して大丈夫?」「シャンシャンがかわいそう」という声もあった。

シャンシャンと双子は観覧方法が違うので一概に比べられないが、双子のほうが待ち時間が短かったのは、2018年当時と比べ、パンダの親離れに対する理解が進んだことも一因だと推測される。

双子の親離れ前は、筆者が見聞きした限り、さほど心配する声はなかった。加えて、「親離れしても双子は引き続き一緒に暮らすので寂しくないだろう」という安心感もあったと考えられる。

4月23日時点で、レイレイは大人と同じように食べて休んでいる。「シャオシャオは、まだ不安なのかレイレイのそばにいることが多く、レイレイの行動に触発されるように採食や休息をしていましたが、最近は少しずつ単独でもできるようになっており、日々成長が感じられます」(上野動物園)。

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