トヨタ、佐藤新社長就任で「広報戦略」激変の訳 テレビ重視の姿勢と、その背景にある「狙い」

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コロナ禍で販売台数が20%減になったなか、黒字の見通しを出したにもかかわらず、マスコミが「トヨタ8割減」と報じたことに、不満をあらわにしていたのだ。

この発言の前年、トヨタは「自社のニュースは自分で決める」とばかりに、自社メディア『トヨタイムズ』を立ち上げている。

こうした流れのなかで、今年1月の社長交代発表の場がマスコミを集めた記者会見ではなく、『トヨタイムズ』となるのは必然だった。

日経をはじめとするマスコミは社長交代を『トヨタイムズ』の会見を聞いて報じた。つまり、マスコミの記者も『トヨタイムズ』視聴者と大差ない扱いだったのだ。

このように豊田章男社長時代には一貫して「脱マスコミ」を鮮明にしてきたのだが、トヨタの広報は4月の佐藤新社長の就任を期に「新しい次元」に入ろうとしているように見える。

佐藤新社長の「新しさ」

私が「新しい」と感じたひとつ目は、「マスコミ各社のインタビューに応えていること」だ。

前述のとおり、豊田章男社長時代は一部のマスコミしか、インタビューには応えていない。だが、佐藤新社長は今回、主要マスコミ全社のインタビューに応えている。

ふたつ目の「新しさ」は、「日経偏重の姿勢に、トヨタは戻らない」ことが明確になったことだ。

企業広報の世界では「日経を最重視」するのが「常識」となっている。理由は簡単で、経済報道の分野で日経は影響力、そして報じる情報量も圧倒的だからだ。他社が報じることのない自社の情報を、日経だけが報じることも多い。

企業広報にとっては、いわば質と量の両面で「最も重要なマスコミ」なのだ。それゆえ日経との関係を最も重視して、日経だけ「単独」インタビューに応じたり、公式発表の直前に日経だけに伝えるなど、「日経優遇」は広報の世界では「常識」なのだ。

私も日経グループであるテレビ東京の経済部記者だった時代、「新聞は日経、テレビはテレビ東京」の「それぞれ単独」という形で、当時のマイクロソフトのビル・ゲイツCEOなど有名経営者のインタビューをいくつも取ったことがある。

だが、今回の一連の佐藤新社長のインタビューではこうした「常識」には当てはまっていない。前述のとおり、完全に「各社横並び」だったのだ。

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