中国の情報統制は「抜け道だらけ」だ 「拘束王」小林史憲×「レアメタル王」中村繁夫

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小林 ええ、その通りです。現地に駐在する外国の記者は、共産党の機関紙である「人民日報」などの記事の内容から中国共産党がどういうメッセージを発しているのかを読み取るのが主な仕事でした。ですから、報道というよりは分析に近かったですね。

中国当局は、国民に真実を知られるのを恐れている

このルールが変わったのが、2008年の北京五輪です。北京五輪の取材で世界中から多くのメディアが集まったため、当時の温家宝首相が「開かれた中国」をアピールしようと決断したのです。今後、中国政府が発効する記者証をつけたメディアについては、「中国で自由に取材して良い」ということになりました。

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長 中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

ただし、「取材対象の同意があれば」という条件付きです。実はこの「取材対象の同意」というのがミソで、当局が外国人記者を拘束する際に、口実としてよく利用します。

中国政府や共産党にとって都合の悪い問題を取材された場合、当局は取材対象に圧力をかけます。「同意していないのに勝手に取材された」あるいは「外国メディアとは知らなかった」と言わせるのです。そのひと言で「取材の条件を満たしていない」とされ、外国人記者は拘束され、テープ没収となるわけです。

中村 けれども、それを21回もくり返しているところを見ると、中国政府は、外国メディアに対して、何が何でも「隠そう」「取材させない」という感じではないみたいですね。

小林 そうですね。海外で報道される分にはある程度仕方がないと、中国政府は考えているのかもしれません。問題のある現場で外国メディアが取材していれば、とりあえず妨害する。現場から引き離すために拘束もする。ただ、それだけです。

同じ記者を現場では何度でも拘束するけど、よほどのことがない限り、記者証を取り上げたりはしない。しかし、中国国内での報道となると話は別ですよね。彼らは「中国国民に真実を知られるのはまずい」と考えています。

中村 海外メディアの報道の自由を押さえ込んで、批判されるよりは、ある程度、自由に取材させたほうが良いという判断ですね。

小林 はい。海外メディアには「開かれた中国」をアピールしたい。その一方で、中国メディアは完全に共産党のコントロール下に置かれています。

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