小林 現在の共産党にとって、最大の敵はインターネットでしょう。テレビや新聞は完全にコントロール下に置くことができています。記事を出す前に検閲もしますし、問題のある記事が出てしまえば処罰もします。
ただ、インターネットは完全にコントロールはできません。それでも、ネット上に少しでも共産党にとって都合の悪いニュースが出てくると、すぐに当局によって遮断されてしまいます。フェイスブックやツイッターなどは、そもそも中国国内では接続できないようにしています。実際には、中村さんのように、その網をくぐり抜けて閲覧している人もいますけどね。
とはいえ、VPNも当局がモグラ叩きのように潰しにかかって面倒なので、中国のネット・ユーザーたちはレンレンワン(人人網)やウェイボー(微博)といった中国版のフェイスブックやツイッターを使っています。中国企業のサービスなので当局に監視されていますが、政府批判などの内容でなければ問題なく使えますから。
中村 レンレンワンやウェイボーでは、アダルトを見ることはできませんね(笑)。なのに、みな、日本の蒼井そらを知っている。ということは、やはり、違法ネット接続サービスも横行しているということではないでしょうか。もうインターネットはごまかせない。取締りの手立てがないのでしょうね。
ジャーナリスト精神に目覚めるメディア、背後に競争も
小林 このところ、中国のメディアにも変化が見られます。情報を発信する側の意識が高くなってきているように感じます。
ジャーナリスト精神に目覚めて、「政府や共産党の提灯記事ばかり書かされるのはもうご免」という空気も生まれてきています。メディア間の競争も激しくなっていて、提灯記事のようなつまらないものばかりでは、国民から見向きもされなくなっているという現状もありますね。経済が発展したことと、留学や海外旅行などで外国に触れる国民が増えてきているからでしょう。
中村 中国では広告のマーケットが急速に拡大しているので、国民の要望に応えられない記事や番組は淘汰されるという流れができつつありますね。生き残りのために、国民に受ける記事や番組をつくっていくしかありません。
小林 最近、中国の「PM2.5」の問題を告発するドキュメンタリー映像がネット上で公開されて話題となりましたよね。制作したのは、中国国営テレビであるCCTVの元人気キャスターです。柴静という39歳の女性ですね。
彼女は大気汚染が深刻な現場や専門家へのインタビューを重ねて、問題を告発する100分ほどのVTRを制作しました。その映像が、中国版「You Tube」である「優酷」などで公開されると、ネット上で瞬く間に拡散しました。再生回数は2 日間で1億回を超えたとも言われています。中国政府は当初黙認していましたが、あまりの反響に削除を命じたようです。
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