ホンダと鈴廣かまぼこ「エネマネ」連携の意外性 「車×エネマネ」が儲かるビジネスに転じる時

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実証の方法は、「EV保有エネルギー予測アルゴリズム」による運行管理、「WEBアプリによるBEMS管理システム」、そして「WEBとスマホアプリでの運行管理システム」の3点だ。

1年間の実証により、電力を主体とするエネルギー費24%減、またCO2排出量46%減という実績が得られた、この1年での知見をもとにさらなる改善方法の道筋が見えており、それぞれ37%減・89%減までの効果が見込まれるという。

Honda eに充電しているのは鈴廣蒲鉾本店 経営管理チーム業務改革部次長 兼 施設技術課課長の廣石仁志氏(筆者撮影)

そのほか、ピークカットの効果も大きかった。電気の基本料金は、“1年を通じて最も電気使用量が多い30分間”をもとに決められるため、そのピークを抑えようというものだ。

ホンダは、ピークカットに関するさらなる対応も含めて、当初1年間計画だった鈴廣との実証実験を2024年2月まで延長することをすでに決めている。

本格的な普及は2020年代中盤以降か

一連の実証実験全体を統括する本田技術研究所の先進パワーユニット・エネルギー研究所、および本田技研工業のコーポレート戦略本部/コーポレート事業開発本部でエグゼクティブチーフエンジニアを務める岩田和之氏は、「BEVを活用したエネルギーマネージメント」について「ビハインド・ザ・メーターでのマネタイズは重要だ」と指摘する。

「ビハインド・ザ・メーター」とは、住宅やビルでエネルギーを個々に制御することを指す。家同士や企業間でエネルギーを相互連携するシステムである、「グリッド」に至る前の段階を指す言葉だ。地産地消になぞらえて、「家産家消」「社産社消」とも言われる。

技術的には、V2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)、V2B(ヴィークル・トゥ・ビルディング)、非常時やキャンプなどでのBEVから外部給電するV2L(ヴィークル・トゥ・ロード)、そして電力網やグリッドと連携するV2G(ヴィークル・トゥ・グリッド)という表現が使われるものだ。

HSHSで展示された、同施設全体の模型(筆者撮影)

岩田氏は「技術的には可能でも、実際にグリッドでBEVを活用するV2Gとなると、マネタイズの対象者がはっきりわからないことが課題だ」と話す。また「グリッドの中でBEVが充放電することで、個人所有のBEVの電池が劣化する可能性」という課題もあるという。

そもそも、個人または企業の資産であるBEVを、自分や自社の責任の範囲でエネルギーマネージメントを行うV2HやV2Bなら、電気代の節約やCO2排出量削減の効果を享受しやすい。さらにエネルギーマネージメントの観点で深掘りすると、利用者である個人や企業にとってのメリットは、より明確になるといえるだろう。

そこに、カーボンプライシングなど、CO2削減に関する新たなる価値も加わっていく。そうなれば、エネルギーマネージメントシステムやBEVを提供するメーカーとサービス事業者にとって、よりはっきりとしたマネタイズ(事業の収益性)の道筋が見えてくるはずだ。

今回、取材したホンダの事例に限らず、「BEVを活用したエネルギーマネージメント」は2020年代中盤以降には本格普及期に入ることが予想される。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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