「フィット」がどうしても売れない切実な事情 N-BOX/フリード2強で迷走するホンダ国内市場

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現行フィットは2020年に発売。2022年10月にマイナーチェンジを実施している(写真:本田技研工業)

軽自動車が約40%、次にコンパクトカー&ハッチバックが20%少々。これが2023年現在の日本の新車販売状況だ。つまり、国内で売れている新車の60%以上が、“小さなクルマ”である。

車名別ランキングで見ても、上位にはホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」をはじめとした軽自動車やトヨタ「ヤリス」「ルーミー」「アクア」、日産「ノート」といったコンパクトカーが並ぶ。

公表されるヤリスの登録台数にはSUVの「ヤリスクロス」も含まれ、ノートも上級仕様の「オーラ」を加えた数字だが、別々に算出しても販売は堅調だ。

ところが、ホンダ「フィット」はコンパクトカーにもかかわらず、登録台数が伸び悩む。2022年の1カ月平均は約5000台であった。

現行フィットの主力グレード「ホーム」(写真:本田技研工業)

この販売実績は日本車全体で見れば中堅水準だが、ルーミーの1カ月平均が約9100台、ヤリス(ヤリスクロスやGRヤリスを除く)が約6900台、アクアが約6000台だから、これらのコンパクトカーと比べるとフィットの約5000台は少ない。

しかも、ルーミーが2016年発売なのに対し、現行フィットは2020年発売と設計が新しいにもかかわらず、だ。

かつては大ヒット車だったが……

フィットといえば、伝統あるコンパクトカーだ。初代モデルは2001年に発売され、2002年の登録台数は、1カ月平均で約2万台に達した。軽自動車まで含めた国内販売の総合1位になり、今のN-BOXを超える売れ行きだった。

初代フィットがヒットした理由は、価格が割安なコンパクトカーでありながら、実用性が高かったことにある。燃料タンクを前席の下に搭載する「センタータンクレイアウト」を採用したことで、ボディサイズの割に後席と荷室が広かった。また、燃費のよさも強調された。

初代フィット(写真:本田技研工業)

この特徴は、通算4代目となる現行フィットにも継承されている。現行フィットに身長170cmの大人が前席に乗車しても、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。この前後方向の足元空間は、トヨタ「ハリアー」などのミドルクラスSUV並みだ。

それなのにフィットの売れ行きは伸び悩み、同じホンダのコンパクトミニバン「フリード」よりも少ない。フリードは、2022年の1カ月平均登録台数が約6600台だから、毎月1600台ほどフィットより多く売れている。

次ページフィット不振の理由を販売店に聞くと…
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