「フィット」がどうしても売れない切実な事情 N-BOX/フリード2強で迷走するホンダ国内市場

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかも、現行フリードの発売は2016年だから、2020年発売のフィットに比べて設計が大幅に古い。ハイブリッドシステムも、フィットは今のホンダ車に幅広く搭載される「e:HEV」だが、フリードは世代の古い「i-DCD」だ。

フィットはメカニズムを含めて設計が新しいのに、2022年の売れ行きはフリードの76%にとどまった。

3列シートミニバンのフリード(写真:本田技研工業)

なぜフィットは設計が新しいにもかかわらず、売れ行きが鈍いのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。

「以前に比べて、フィットは元気がない。改良を受けた直後は新規のお客様がフィットを目当てに来店されるが、それ以外の時期は先代フィットや廃止された『シャトル』からの乗り替えが中心だ」

以前のフィットは、他メーカー車のユーザーも新規購入していたが、現行型は従来型やホンダ車からの乗り替えが中心で、新規需要は減っているようだ。その理由は……。

「フロントマスクなどの外観が、一般のお客様にウケないように思う。実用性や内装の質感は高く、フィットをご存じのお客様には現行型も人気だが、魅力を知らない方には振り向かれにくい」

フィットの販売低迷には、複数の理由がある。まずは、販売店が指摘したフロントマスクなどの外観だ。現行型は視界が優れ、安全性も高いが、人気を得られるデザインではない。メーカーからも「フィットの販売が伸び悩む理由として、顔立ちがあるかもしれない」という声が聞かれる。

ほぼ同時にモデルチェンジしたライバルの強さ

ライバル車の動向も見逃せない。現行フィットの登場は2020年2月だから、ほぼ同時期にトヨタからヤリスが発売された。同年11月にはスズキ「ソリオ」、12月にはノートもフルモデルチェンジを受けている。

5人乗りのハイトワゴンであるソリオ(写真:スズキ)

さらに2021年6月にオーラが発表、7月にはアクアが一新され、2020年から2021年にはコンパクトカーの新型車が相次いで登場した。

こんな状況では、フィットの売れ行きも影響を受ける。従来型のフィットを始めとするホンダ車のユーザーは、フィットというクルマの良さを知っているから乗り替えるが、ホンダ車以外のユーザーは同時期に登場したヤリス、ノート、アクアなどを買う。現行フィットにとって、発売時期も災いした。

ちなみにホンダでは、「ステップワゴン」も2022年にモデルチェンジして発売されたが、こちらも売れ行きは低迷している。

2022年に発売となった現行ステップワゴン(写真:本田技研工業)

半導体などの不足により、納期が1年に達して登録が進まない事情もあるが、「ノア」「ヴォクシー」「セレナ」の売れ行きを大幅に下まわった。

ノア、ヴォクシー、セレナも2022年にフルモデルチェンジを実施しており、ここにもライバル競争が過熱した背景はある。しかも、ホンダでは前述の通りフリードの販売が1カ月平均6600台と好調で、ステップワゴンが身内のフリードに負けている。

次ページホンダ車の36%がN-BOX
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事